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すごいやつ6
「お前って。誰に対しても一線引いてるよな」
「へ?」
サラッと言われた言葉に、俺は呆気にとられた。
つい相手を凝視していると、その視線がふっと逸らされる。
「…俺はただ、自分に失望されることが嫌なだけだ」
「自分に…?」
「取り繕って話合わせて、そんなことをしてる自分なんて嫌いになる」
「…っ!」
まるで思いっきり頭を殴られたような衝撃があった。
立ち尽くす俺を一瞥し、成瀬はもう興味をなくしたように背を向ける。
その背中を、俺は呆然と眺めていた。
なんだか泣きたいような、笑いたいような気持ちになった。
「……奏一のあの言葉を聞いて、正直スッキリした。そんで、悔しくもあった。周りから外れてまで自分を貫くお前はマジで凄いよ。お前は今まで逃げてきたっていうけどさ。俺は奏一のしてきたことは、間違ってなかったって、思ってるぞ」
「…っ」
瞠目する俺の隣で、陽介が笑みを浮かべる。
「俺はお前の凄さを知ってる。だからさ、またすげぇ成瀬奏一を、俺に見せてくれよ!」
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