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スタートライン
昼休みを挟んだ後、初っ端が俺たちの出番だ。
バンド名が必要だったらしく、真琴に勝手に決めさせたら碌な名前を考えてこなかったので3人で決めることになった。
「なんで【焼肉定食】じゃだめなんだよー」
「それお前が食いたいだけだろーが」
「じゃあ【豚カツ定食】はっ?」
「却下」
話にならず頭痛がしてきた。
しかしここで俺が何とかしなければ【焼肉定食】に決まってしまう。
遥先輩はまたいつの間にか布団で眠っていた。
更に頭痛が襲ってくる。
「何でもいいから、イメージとかないのかよ」
「イメージ?」
「歌ってる時でも何でも。感覚的なもので浮かび上がるものはねぇのか?」
「うーん……、あっ!」
考え込んでいた真琴が顔を上げた。
そして此方に身を乗り出してくる。
「『届け!』って感じ!」
「届け?」
「そう!歌ってる時、『届け届け!』って念じてる!」
届け…か、そんな事を思いながら歌ってたのかと少し意外に感じながら考え込む。
流石に【届け!】ってだけじゃおかしいし、ならいっそ、英語にでもしてみるか?
届けは確か英語で……
「……【Reach out】」
「リーチ、アウト…?おおっ、なんかそれカッケーな!」
「それでは【Reach out!】の皆さんは準備をして下さい」
実行委員の生徒から声をかけられる。
いよいよだ。
いよいよ、始まる。
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