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スタートライン3

真琴の言ってることは、どれもめちゃくちゃだ。 しかしその言葉に、向けられる笑みに、指先がぴりぴりと痺れる。 ベースを軽く鳴らしてみる。 その横で真琴が、おちゃらけた様子で喋り出した。 生徒たちからは「いいぞ真琴ー!」「よっ、色男!」などとふざけるような声がかけられる。 多くの声援で体育館内は溢れていた。 正直圧倒されるほどだ。 真琴は根っからのムードメーカーで、一瞬にしてこの場をアットホームな空間へと変えている。 「よし。そんじゃ歌いますか」 その言葉に歓声が大きくなる。 次には遥先輩のドラムが音楽を奏で出した。 すぐに真琴のギターが加わり、合わせて俺もベースを溶け込ませる。 力強く明るい、疾走感溢れる曲に、その場の盛り上がりが一層高まる。 次には真琴の歌声が紡ぎ出された。 胸の奥底に入り込むような、深く、透き通ったその声に、ここにいる誰もが息を呑む。 それを誇らしげに思っている自分が少し可笑しい。 一度そっと瞼を閉じて、息を吸い込む。 次のパートを引き継ぎ、マイクに歌声を乗せる。 周りのどよめきが聞こえた気がしたが、不思議と気にはならなかった。 声もしっかり出ている、リズムも取れる、頭も冴えていた。 まるで音楽と溶け合うような感覚に、胸が高鳴る。 歌っている。 もうこんな瞬間は訪れないと思っていたのに、俺はまた歌ってる。 真琴の隣で、歌っている。

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