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スタートライン5

真琴からの視線を感じた。 顔を向ければ、ニッと無邪気な笑みを浮かべられる。 その瞬間、こいつとの記憶が一気に頭の中を駆け巡っていった。 『そっか。お前も歌、好きなんだなっ』 『俺、お前に興味があるんだ!』 『成瀬!俺と歌おう!!』 『予感がする!』 『どれだけ辛くても、俺は歌う!』 『そんなの抗え!』 『だって歌は、自由なんだから』 『俺、お前の歌の色好きだ!すげぇ好きだ!』 『できるよ。絶対にできる!』 『顔上げて。俺たち3人で、目一杯楽しもうよ』 溢れてくる。溢れてくる。 まだ会って間もないこいつとの記憶。 その言葉が、表情が、触れた手の暖かさが、鮮明に蘇ってくる。 予感がしていた。 何かが動き出す予感が、何かが変わっていく予感が。 ここはスタートライン。 博打も博打、大博打だ。 それでももう、後戻りはできない。 俺はこいつに差し伸べられた手を取ってしまったから。 だから向き合え。 戸惑いも、迷いも、何もかも忘れて…… ──叫べ…!!

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