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スタートライン6

サビに入った瞬間、2人の歌声が重なる。 溶け合い、混ざり合う。 その音楽は、体育館一帯を飲み込んで行く。 見る者、聞く者の心を揺さぶる。 1人の男子生徒は、無意識に吐息を漏らした。 1人の女子生徒は、込み上げてくる感情に涙を流した。 隣で歌う真琴がその目を輝かせる。 そして更に、その歌声に磨きがかかる。 此方を揺さぶり、引き上げてくるのが分かる。 なんでお前は、そんな風に歌えるんだ。 強く強く、此方の心を揺さぶってくるんだ。 「届け」という言葉が脳裏をかすめた。 そうか。お前は常に、その歌声を届けたい誰かがいるんだな。 だからそんなにも、お前の歌声は色鮮やかに輝いているんだな。 だったら俺は、お前に届けたい。 散々俺を振り回してきたお前に、強引に手を引いてきたお前に、今は届けたい。 ──来い。来い。ここまで来い。 そんな真琴の声が聞こえる気がする。 直接言葉を発していないのに、自然と心が通じ合う。視線だけで言葉を交わす。 ──あぁくそ、やってやるよ。 ──こらこら、一丁前にこっちを食おうとすんな! 「すげー…」 1人の男子生徒とが呟いていた。 その隣にいた友人も、その場に立ち尽くしたまま口を開く。 「あの2人…。まるで、歌で会話してるみたいだ…」 「いや、会話というか…」 ゴングを鳴らしてるような…。

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