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スタートライン9

「…っくしゅ」 不意に真琴がくしゃみをした。 寒いのだろうか、その体を小さく縮こませる真琴に口元が緩む。 寒がりとか、ほんと猫みてぇ。 「ほら」 「うおっ」 首から外したマフラーを巻き付ける。 顔に巻いたそれを手でずらして、真琴は此方をチラリと伺った。  「…いいの?」 「ん」 火照った顔には、これぐらいが丁度いい。 隣で真琴が、俺のマフラーに口元を沈める。 そんなことだけで、自分の指先がぴりぴりと痺れるのが分かる。 俺は短く、息を吸い込んだ。 「……真琴」 「ん?どうし…」 その腕を掴み、引き寄せていた。 目を見開く真琴に、顔を寄せる。 そして、次には唇が重ねていた。 触れ合った唇は柔らかくて、少しひんやりしていた。

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