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変化

次の日は、何から何まで散々だった。 電信棒にぶつかるわ、何もないところで躓くわで周りにも心配される始末。 「あ、あの完璧人間の成瀬が壊れた…!」 「歌ったからか?歌ったからなのか!?」 「でも昨日のめちゃくちゃ良かったよ!!」 心配の次は称賛に変わり、文化祭の影響で他クラスのやつらまで押しかけて来て大騒ぎになった。 一日中大勢に囲まれ、その中には教師もいるときた。 正直、物凄く疲れた。 「どうしたんだよ奏一。完全燃焼でもしたか?」 「いつ俺が燃え上がったよ」 「いや凄かっただろ!特にサビに入ったとことか、マジで俺泣きそうになったし」 「……」 放課後、部活へ向かう陽介と廊下を歩く。 俺はこのまま【BLUE MOON】へ行くつもりだ。 文化祭で、俺は歌った。 あれだけ遠ざけていた、二度と関わることのないと思っていたものに。 真正面から向かい合ったとは、堂々と言えないけれど。 でもまぁ、今までのどんな時より、歌のこと考えてたと思う。 それは全部、真琴がいたから。 真琴が、意固地になってた俺を引っ張り上げてくれたから。 暗闇で蹲る俺を、導いてくれたから。 真琴がいたから俺は…… 「……なんで、あんなことしたんだろ」 どんな理由があろうと、していいわけがなかった。 いきなりこんな感情ぶつけて、俺は何がしたかったんだ。 自分自身、上手く纏まってねぇのに。 衝動でやるとか、マジでガキかよ…。

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