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変化9
「真琴」
「っ、あ、はい」
ビクリと体を震わせ何故か敬語で返事をする真琴に、俺は一度間を開けてから口を開いた。
「改めて…。この前は、いきなりあんなことして悪かった…」
「…っ」
「別に逃げたこととか怒ってねぇし、当然の反応だと思う。あれは、全部俺が悪い」
真琴は黙っていた。
その膝の上で拳を握り、俯いている。
「もう俺とは、関わりたくないか…?」
「っ、そんなことない!」
思いの外はっきりと答えられて驚いた。
叫んだ後、真琴はその顔を赤く染める。
嬉しかった。
拒絶されてしまうのではと、何処かで怯えていたから。
遥先輩に焚き付けられた勢いで会いに来てしまったが、今の一言に心底安心する。
「…そういえば、マフラー」
「マフラー?」
「いや俺、奏一から貸して貰ったマフラー、巻いたまま逃げちゃったから…」
そう言って「はい」と鞄から取り出したマフラーを渡される。
今思い出した。
そういえばマフラーを貸したままだった。
言われるまで気付かないほど、俺は取り乱していたらしい。
なんだか無性に笑えてくる。
「ちゃ、ちゃんと洗濯しといたぞ」
「別にいいのに」
「よくない。家まで全力疾走したから、汗かいちゃってたし」
家までって、どんだけ体力あんだよ。
繁華街を全力ダッシュする真琴を思い浮かべて吹き出してしまった。
それにつられてたのか、真琴も口元を緩ませる。
やっと笑った。
やっぱこいつは、ヘラヘラしてる顔の方がいい。
「真琴」
「……うん」
「俺は、真琴の本心が知りたい」
「本、心…?」
「あぁ。だから明日の放課後、また会ってくれないか?」
真っ直ぐにその瞳を見つめて話す。
以前真琴が俺にそうしたように、少しでも俺の心が届くように。
真琴は何度か言い淀んでいたが、最後には小さく頷いてくれた。
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