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答え6

気付けばさっさと出て行った奏一に置いていかれ、部屋で1人ポツンと座り込んでいる。 片手で自分の腕に触れ、俺は目を伏せた。 こんな体、汚いだけなのに。 “あの人”に散々利用されて、争いもせずに犯され続けた体だ。 奏一に望まれるようなものなんか何もない。 そこで俺は思考を振り払うように頭を振った。 いけない。 あの時のことを思い出しちゃ駄目だ。 そうじゃないと、また動けなくなる。 何も考えたくなくて敷いたままの布団に横になった。 強く瞼を瞑り、思考を遠ざける。 その代わりに思い出されたのは、奏一の歌声だった。 必死に抗おうとする、生に満ちた歌声。 あんな色鮮やかなメロディは初めてだった。 少し、兄ちゃんのものと似ている。 奏一の歌声を思い出すことで、心が穏やかになっていくのが分かる。 安心したら、どんどん眠気がやってきた。 そういえば昨日は全然眠れなかったからな。 奏一に本心が聞きたいと言われ、色々と考えていたら朝になっていた。 だからこれは、全部奏一のせい…。 寝てしまっても…、文句は…言わせない…。

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