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傷跡2
トイレを済ませて教室に向かう途中、真琴を見かけた。
廊下でなにやら女子生徒と話している。
楽しそうに笑い合うその姿に、少しもやっとした。
つーか、距離近くねぇか?
女子の方、絶対わざと肩寄せてんだろ。
真琴もなに普通に話してんだ。
そんなことをグルグル考えてしまっている自分に気付き、心底驚く。
知らなかった。
俺って結構嫉妬深いのか。
次には真琴の元へと足を向けていた。
俺に気付いた女子が驚いたような顔をする。
心なしかその頬が赤く染まっていた。
「な、成瀬くん。どうし…」
「真琴」
腕を掴むと、ビクリと肩を揺らして真琴が振り向く。
呆気に取られたような顔をする真琴と見つめ合うこと数秒。
次には腕を掴んだまま俺は歩き出していた。
「えっ、なにっ?どうしたのっ?」
「……」
「なんで怒ってんの!?」
屋上へと続く階段は、薄暗くて人もいない。
そこでやっと手を離し、奏一は振り返った。
「別に、怒ってない」
「怒ってんじゃん!めっちゃ眉間にしわ寄ってんじゃん!」
「……じゃあ言わせてもらうが」
真琴にその気がないのは分かっている。
それでも嫌なものは嫌だった。
しかし友人の多いこいつに一々指摘してたらきりがない。
だから会話をするなとは言わないが…
「お前はもう少し、危機管理を持て」
「はい?」
「今の女子、絶対お前狙いだったぞ」
「ね、狙い…?」
「恋愛感情を抱かれてるってこと。そこまで鈍くて、よく今までやってこれたな」
「あう…」
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