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傷跡3
「べ、別に、普通の友達だよ…」
そうもじもじ言ってくる真琴に、頭を抱えたくなる。
鈍い。
どうしようもないほど鈍い。
あんな分かりやすくスキンシップをとって、熱っぽい瞳で真琴を見つめていたんだ。好意を持っていないわけがない。
真琴はキャーキャー言われるタイプではないにしても、確実にモテる。
きっと他にも真琴狙いの女子は多いのだろう。
友人という形で近づいて、機会を見計らっているだけだ。
考えれば考えるほどモヤモヤしてくる。
真琴は不機嫌になる奏一の前で、俯きがちにキョロキョロと視線を彷徨わせていた。
その顎を掴み、顔を上げさせる。
そして次には、唇を重ねていた。
ビクリと震え、強張る真琴の体を壁に押し付ける。
少し遅れてやっと動いた真琴の手が、俺の胸を押し返してきた。
「だめだって…!」
「なんで」
「なんでって、ここ、学校…っ」
そう言って真琴が目を逸らす。
まるで怯えているかのような反応に、奏一は唇を噛む。
昨日の涙も、俺が好きだと伝えてからの真琴の態度も、何かが引っかかっていた。
「なんかお前さ、怖がってないか?」
「え?」
やっと此方をまともに見た。
以前はあれほど真っ直ぐに向けられていたものが、今はこんなにも懐かしく感じる。
真琴が好きだと思ってくれているのは本当だろう。
それなのに、どこか避けようとしてくる真琴がいる。
「俺と付き合うこと、怖がってるように見えるんだよ」
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