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傷跡6
『俺と付き合うこと、怖がってるように見えるんだよ』
奏一にそう言われてた時、一瞬目の前が真っ暗になった。
胸が痛む。
こんな自分が嫌で、酷く苦しい。
恋愛することを避けているのは、伊織さんとのことで奏一に負い目があるからだ。
そして怖がっているのは、恋愛に留まらず、人を愛すること自体に対して。
俺は愛する人が手の届かない場所に行ってしまう恐怖を知っている。
兄の暁斗 の遺体が発見されたのは、真冬の川の中だった。
警察の捜査で、自殺という判断が下された。
俺が小学校6年生の時。
兄は高校1年生だった。
俺は、兄がそこまで自分を追い詰めていたことに気付けなかった。
未だに自殺した理由も分からない。
その日の朝も、兄はいつもと変わらない笑顔を浮かべていた。
一緒に朝ごはんを食べて、いつもの交差点で手を振って別れた。
それが最後の姿になるなんて、考えもしていなかった。
真冬の川は、凍えるほど冷たかった。
あんな川の中に入って、どれほど苦しかっただろう。
そこまでして逃げ出したいほど、兄は生きているのが辛かったのだろうか。
それから俺は、まるで縋るように歌に没頭した。
兄のギターを手に、兄の歌を繰り返し繰り返し歌っていた。
涙が流れるのも気にせず歌っていた。
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