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生きること5

「な、ちょ、ま、真琴…?」 「よ、よかっ、た…っ」 「え?」 「俺…、奏一が、死のうとしたのかと…思って…っ」 「……」 突拍子もないことを言われて驚くが、それよりも俺は目の前で弱々しく涙を流す真琴の姿に目を引かれた。 知らなかった。 こいつも、こんな風に泣くのか。 こんな寒い中、川の中で座り込んでいることも忘れて目の前の恋人を見つめる。 迷子の子供みたいに、何かに怯えて体を震わせている。 俺が守らならければ。 そのいつもより小さく見える真琴の姿に、強く思わされた。 「……悪かった。不躾にあんなこと聞いて」 気が付けば謝罪していた。 すると真琴がビクリと肩を揺らし、驚いたような顔をする。 「そ、奏一が謝った…」 「なんだよその心底意外そうな顔は」 俺だって、謝る時は謝る。 なんだか途端に照れ臭くなって口を尖らせれば、不意に真琴が笑い出す。 その笑顔が見れただけで心底安心した。 此方も笑い返そうとしたが、ブルリと寒さが襲いくしゃみが出る。 「あー、すっかりびしょ濡れだな…」 「う、うん…」 取り敢えず立ち上がるが、お互い下半身がびしょ濡れで苦笑いが漏れた。 「……ねぇ、奏一」 「ん?」 ギューっとズボンを絞りながら顔を向けると、真琴は暫くモゴモゴさせてから口を開く。 「ウチ、来ないか…?」 「え?」 「こ、ここから、俺の家のが近いだろうし。取り敢えず風呂入りたいだろ…?それに…」 「それに?」 「あ、明日、休日だから…」 その声で、その瞳で、真琴の言おうとしていることが分かった。 寒いはずの体が少し熱くなった気がする。 上目遣いでそんな殺し文句、一溜りもないのだが…。 膨れ上がる愛しさに悶えながら、俺は大きく頷いていた。

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