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合唱コンクール

「問題。俺はなんで今怒っているんでしょうか」 ピキリと青筋を浮かべて仁王立ちをしている奏一に、正面で正座をする真琴は縮こまりながらコテンと首を傾げた。 「お、お腹が空いてるから…?」 ギロリ。 「スミマセン、嘘です…」 絶対零度の瞳で見下ろされ真琴は身を竦ませる。 そんな2人が修羅場を繰り広げている中、空き教室について来ていた陽介は携帯をいじっており、その画面を遥が興味津々に覗き込んでいた。 何を見ているのかと言えば、この前の文化祭にて撮った写真たちである。 「わぁすごい。奏一のウェイター、なんか周りにキラキラしたのが見えてきそうじゃん」 「マジで好評すぎてやばかったですよー。あ、ちなみに真琴のもしっかり入手済みっす」 「これは……猫、耳…」 「フィット感エグいですよね」 「その写真、俺にも頂戴」 こちらもこちらで盛り上がっている中、奏一は一層その目尻を吊り上げ言い放った。 「なんで…ッ、合唱コンクールで歌うみたいな話が出てきてるんだよ!」 怒りが最高潮に達している奏一に、携帯から視線を外した遥が可笑しそうに笑う。 「いや奏一、合唱コンクールで歌うのは当然じゃん。ウケる」 「ウケんな!俺が言ってんのは、また【Reach out!】でバンド演奏する感じになってることを言ってんですよ!」 本校の合唱コンクールは、まずクラスごとに体育館で歌唱が行われ、先生たちの審査で選ばれた3クラスが市民ホールで歌うことになるらしい。 もう既に3クラスは選ばれ、あとはホールでの合唱のみ。 俺らのクラスは選ばれることはなかったが、どうやら真琴のクラスは出ることになったらしい。 ここまでは別にいい。 問題はその後だ。 全ての合唱を終えた後、合唱部や吹奏楽部が出し物をするのか恒例だと聞いた。 その枠になんと真琴が強引な申請をして、【Reach out!】もバンド演奏をする流れに持ち込んでいたのだ。

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