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合唱コンクール3

入ってきた人物を確認し、俺は仰天する。 そして心中で叫ぶ。 お、オールバック…!? そのガタイといい顔付きといい、とても高校生には見えない男だが、しっかりと制服を着込んでいる。 あまりのインパクトに俺が固まっている中、真琴は「あ!」と明るい声を上げた。 「久遠(くおん)せんぱーい!」 「え、おま、知り合い!?」 俺の質問にも答えずに、真琴はオールバックに走り寄ると躊躇いもなしに抱き付いた。 相手も当たり前のように受け止める光景に、俺は絶句する。 すると不意にオールバックの視線がこちらに向けられ、「お」と僅かにその目が見張られた。 「文化祭の時のイケメンくんじゃん」 「は?はぁ…どうも…」 「どうも。俺は3年の久遠永進(えいしん)だ。まぁよろしく」 落ち着いた話し方といい、低く穏やかな声音と言い、確実に成人してんだろ。 こんな高校生がいてたまるか。 「久遠先輩な、曲作るのがすごく上手いんだぞ!」 「曲?」 「前文化祭で歌った曲も、久遠先輩が作ってくれたんだ!」 「えっ」 驚いた。 あの曲をこの人が…。 立ち尽くす俺に、真琴はさらに続ける。 「今回新曲ができたらしいから、それを合唱コンクールで歌おうと思うんだ!」 その宣言に俺と久遠先輩が「え」と、遥先輩と陽介が「お〜」と声を上げる。 久遠先輩の様子から、まさか合唱コンクールで歌うとは思っていなかったようだ。 まぁ普通は考えない。 見た目と同じく考えも大人な久遠さんにホッとした。 なんだか初めて仲間ができた気分だ。 「あそこでやる気なのかよ…。相変わらず行動力すげぇな、真琴は」 「まぁね!世の中やったもん勝ちだよ!」 胸を張る奏一に、ため息が漏れる。 こっちは色々と巻き込まれていい迷惑だけどな。 「まぁ楽しみにしてるわ。そこのイケメンくんもな」 そう言って笑みを向けられ、俺は「うす…」と曖昧な返事を返した。 すると次には笑みを消し、その視線が遥先輩に向けられる。

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