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合唱コンクール5
「実はこの曲、歌詞がありません!」
ばばーん!と効果音が付きそうな勢いで言い放つ真琴に、携帯で新曲を聴いていた俺たちは首を傾げた。
何故こんなに得意げなのだろうか。
というか、コイツが音楽関係でワクワクしている時は碌なことがない。
5段階の警戒レベルでいうと4に値する危険度に身構える俺の横で、陽介が「はいはーい」と手を挙げる。
それに対し真琴は教師の真似事なのか、無い眼鏡をクイッと上げる動作をしながら陽介に人差し指を向けた。
「はい陽介くん!」
「えっとー、じゃあ歌詞は誰が作るんですかー?」
「よくぞ聞いてくれた!」
パチンッと指を鳴らして目を輝かせる真琴に寒気が走った。
警戒レベルがマックスの5に達する。
「久遠先輩にはメロディだけお願いしてたんだ。歌詞は自分たちで作りたいと思って。というわけでじゃじゃーん!」
ポケットから紙を取り出した真琴は、それを広げて俺の前に差し出してくる。
そこに書かれた2本の線は、途中からいくつもの線と繋がっている。
どうやらあみだくじ(やたら複雑)のようだが、これがなんなのだろう…。
「奏一!どっちか選んで!」
「……」
不信感丸出しで、渋々右側の線を選ぶ。
そうすると真琴はテッテレテテーン♪と可笑しな歌を歌いながら線を指で辿って行った。
そして最終的に“2”と書かれた場所に辿り着く。
もう片方には“1”と書かれてあった。
これが一体なんだというのだろう。
「はい決まり!というわけで1番の歌詞は俺。2番は奏一が担当な。大サビは一緒作ろう!」
「は……はぁ!?」
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