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合唱コンクール6

ちょっと待て。 いきなり過ぎる発言に驚愕する。 「な、なに勝手に決めてんだよ!?俺歌詞とか作ったことねぇし!」 「うんっ、俺もない!」 「堂々と答えんな!」 理解不能。 意味が分からない。 放心する俺の後ろで陽介と遥先輩がゲラゲラ笑っていた。 正直ぶん殴りたい…。 「期限は3日ね。できてから見せ合いっこしような!」 「……」 自由過ぎる真琴にため息が漏れる。 痛み出した頭を押さえ、俺は脱力した。 もうこいつが無茶苦茶なのは今更だ。 諦めも肝心だと思う。 そうじゃなきゃ付き合っていくことなんてまずできない。 「……じゃあ、コンセプトは…?」 「コンセプト?」 「歌の方向性。流石にそこは合わせなきゃだろ」 やけくそになって尋ねると、真琴はそうだなぁと考え始めた。 まさか何も決めずに進めようとしていたのか。 まじで手に負えない…。 少し経ってから、真琴は1人頷き「よし決めた!」と俺に向き直った。 そしてピンッと人差し指を上に向ける。 「コンセプトは、《自分にとっての歌》について!」 「っ、歌について…?」 「そう!歌に対する思いを歌詞にするんだ!」 まさかのコンセプトに呆然としてしまう。 すると次には立ち上がった陽介が俺の隣に立った。 気遣うように此方の様子を伺ったのが分かる。 「ま、真琴…。それ、違うお題じゃ駄目なのか…?」 「俺はこれがいい。これじゃなきゃ嫌だ」 「…っ」 真っ直ぐに目を見つめられ、息が詰まった。 相変わらず、こういった場面では一歩も引かない真琴に息を呑む。 バクバクと心臓の音が響く。 視線を逸らすことを、逃げ出すことを許されない目だった。

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