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合唱コンクール8
「えーっと…。今日で3日経ったわけだけど、おふたりさん?」
「「……」」
あれから3日後。
いつもの空き教室にて、苦笑いする陽介の質問に真琴と奏一は俯いたまま黙り込んでいた。
そして次には「すみません…」と頭を下げる。
「想像以上に難しくて…」
「まだ、できていません…」
あれから常に歌詞について思考にふけっている2人だが、どちらもまだ一文字たりとも書けていない状況ときた。
合唱コンクールまだあと2週間。
まさに絶望的である。
「ってかお前はなんでいつもいつも本番ギリギリになって話を持ち出すんだよ!」
「いやぁ、返す言葉もございません」
ヘラヘラと笑う真琴に殴りかかろうとする奏一を陽介が必死で止める。
そんな中でぐーすか寝ている遥の隣に座っていた久遠は、やれやれと苦笑いを浮かべた。
「どーする?やっぱ俺が書くか?」
「いや、俺たちでやる!じゃなきゃ意味がないからね」
「なに偉そうに言ってんだよ…。提案者のくせして何も書けてないくせに」
「大丈夫大丈夫!なんとかなるって!」
笑顔で親指を立てる真琴に、その自信はどこからくるのかと一同は汗を流す。
一曲だけでいいとはいえ、歌詞もまだ書ききれるのか分からない状況だ。
無事に形になるのか、正直誰にも分からない。
「取り敢えず演奏だけでも形にしよう。歌はなんとなくで歌えばいいから!」
「なんとなくって…、無茶苦茶だなほんと…」
とはいえもうやるしかない。
確かに演奏だけでも形にしておくべきだろう。
そうして俺たちは無理やり切り替え、練習へと入っていくのだった。
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