106 / 142

合唱コンクール9

「カツ丼〜天丼〜親子丼〜♪」 「……」 「焼肉定食〜大盛りで〜♪」 バンド練習4日目。 未だ歌詞は書けないまま1番を軽く通してみる。 俺は適当にラララとかで歌っているが、真琴はその日その日で適当に当てはめてくる。 というか全部食べ物なのだが…。 最後にはグーグー腹が鳴る始末…。 「こんなの集中できるか!」 ついに限界が来て演奏中断。 真琴の腹の音が煩い。 マジで煩い。 「その歌詞のチョイスなんとかしろ!つーかもうラララでいいわ!」 「そんなん気持ち込もんねぇじゃん!」 「食べ物の名前にしたところで込もんねぇだろーが!」 バンド練習になると、よく俺と真琴はバチバチと火花を散らす。 気に入らなければ気に入らないと言うし、納得いかないのなら反論もする。 すっかり恒例となった口喧嘩に、遥は「また始まった…」とため息を吐いた。 ちなみに陽介は部活のため今日はいない。 「なら言わせてもらうけど、奏一の歌には青春感がない!」 「は?」 「もっと弾けた感じが欲しいの!俺たち花の高校生だぞ!?もっとキラキラーピカピカーっとさぁ!」 「ンな擬音で言われても分かんねぇよ!」 「だから奏一の歌の色は好きだけど、もっと黄色っぽい色も欲しいんだって!」 「なおさら分かんねぇから!」 真琴は完全に感覚派なので、言ってることは殆ど理解できない。 キラキラでピカピカ? 黄色っぽい色? 意味が分からん。 真琴は「うーん」と腕を組み思考にふけっていたと思えば、次には「よしっ」と手を合わせた。 「奏一。ちょっと一緒に来て!」 「……は?」

ともだちにシェアしよう!