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合唱コンクール9
「カツ丼〜天丼〜親子丼〜♪」
「……」
「焼肉定食〜大盛りで〜♪」
バンド練習4日目。
未だ歌詞は書けないまま1番を軽く通してみる。
俺は適当にラララとかで歌っているが、真琴はその日その日で適当に当てはめてくる。
というか全部食べ物なのだが…。
最後にはグーグー腹が鳴る始末…。
「こんなの集中できるか!」
ついに限界が来て演奏中断。
真琴の腹の音が煩い。
マジで煩い。
「その歌詞のチョイスなんとかしろ!つーかもうラララでいいわ!」
「そんなん気持ち込もんねぇじゃん!」
「食べ物の名前にしたところで込もんねぇだろーが!」
バンド練習になると、よく俺と真琴はバチバチと火花を散らす。
気に入らなければ気に入らないと言うし、納得いかないのなら反論もする。
すっかり恒例となった口喧嘩に、遥は「また始まった…」とため息を吐いた。
ちなみに陽介は部活のため今日はいない。
「なら言わせてもらうけど、奏一の歌には青春感がない!」
「は?」
「もっと弾けた感じが欲しいの!俺たち花の高校生だぞ!?もっとキラキラーピカピカーっとさぁ!」
「ンな擬音で言われても分かんねぇよ!」
「だから奏一の歌の色は好きだけど、もっと黄色っぽい色も欲しいんだって!」
「なおさら分かんねぇから!」
真琴は完全に感覚派なので、言ってることは殆ど理解できない。
キラキラでピカピカ?
黄色っぽい色?
意味が分からん。
真琴は「うーん」と腕を組み思考にふけっていたと思えば、次には「よしっ」と手を合わせた。
「奏一。ちょっと一緒に来て!」
「……は?」
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