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合唱コンクール10
「久しぶりだなぁ。全然来てくれないから寂しかったぞ?」
「ごめんなさい。歌の練習で忙しくって」
真琴に連れて行かれたのはグラウンドだった。
目の前に立つ図体のデカい野球部キャプテンに、俺は呆気に取られる。
というか来る時にジャージに着替えさせられたし、一体何を企んでいるんだこいつは。
「いきなり来たりしてごめんなさい」
「いやいや、いつでも歓迎するよ。なんなら入部してくれたっていいくらいだ」
そういえば真琴はちょくちょく色々な部活に参加していたんだっけか。
試合にも出たりしていたらしいし、この先輩の対応からするに強力なスケットなのだろう。
……って、ちょっと待て。
この状況は、もしかしなくとも…。
「奏一、軽く走ってストレッチ。そんでキャッチボールするぞ!」
「な…」
なんでいきなり野球をやることになったんだ。
その後は真琴に促されるままキャッチボールまで済ませる。
真琴とボールを投げ合ってるのは、なんだか不思議な感じだ。
野球の経験はあまりないが、暴投をすることなくスムーズにキャッチボールをこなす。
そんな俺たちを見て、今度は俺にもキャプテンが勧誘してきたがスルーした。
「よし!じゃあノックに参加してみよう!」
「やり方知らねぇよ…」
「大丈夫大丈夫!奏一運動神経いいし、周りの見てれば分かるって!」
そうして真琴に引っ張られてショートの守備位置まで連れて行かれる。
戸惑っていると、ポンポンと肩を叩かれた。
振り返ればユニホーム姿の陽介がいて、そういえば陽介は野球部だったことを思い出す。
テンパっていてすっかり頭から抜け落ちていたようだ。
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