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合唱コンクール11
「なになに。奏一が来るなんてびっくりなんだけど」
「真琴に無理やり連れて来られたんだ…」
「あー、なるほど。でも一体どうして?」
そう。問題はそこだ。
真琴のやつに問いただしたいが、他のポジションにも部員たちがつき、あっという間にノックが始まってしまった。
サードから順に取ったボールをファーストへと投げていく。
とてもテンポが良く、全員軽快な動きだった。
流石はあと一歩で甲子園というところまでいったチームだ。
すっかり感心していると、ショートにボールが飛んでくる。
レギュラーの先輩が危なげなく捌いてファーストへ投げた。
続く陽介も難しい球を難なくキャッチする。
「お願いしゃーす!」
真琴が元気いっぱいに声を上げた。
飛んできた球を流石の身のこなしでファーストへ送球する。
まるで全身で楽しいを表現しているような姿に笑みが溢れた。
そして俺の番がやってくる。
周りから「がんばれー」「取れるぞー」と声をかけられながら、ボールが飛んできたと同時に前に出た。
大きくバウンドしたボールをワンバウンドで処理し、流れに任せてファーストへと投げる。
逸れることなくミットに入ったボールは、パンッと乾いたいい音を立てた。
奏一の見事なボール捌きに周りは驚愕する。
「すげぇ!本当に初心者かよ!?」
「イケメンで歌も歌えて、その上野球までこなせるとか…チクショー!」
「神様は不公平だー!」
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