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合唱コンクール12
元の位置まで戻ると、真琴と陽介が笑みを浮かべて片手を上げていた。
俺はその意図を組んで、2人とハイタッチする。
「流石だな奏一。野球でまで上手くやられちゃ立場がねぇわ」
「ナイスショートだったぞ、奏一!」
2人に笑い返し、次にはスッと息を吸い目蓋を閉じてみる。
野球部員の掛け声や、ボールを打つ音やミットに投げ込まれる音など、グラウンドのあらゆる音が体に入り込んでくるような感覚があった。
そこで理解する。
真琴はこれを伝えたかったのか。
俺に青春感がないと指摘して真琴は、こうしてヒントをくれたわけだ。
つい苦笑いが溢れる。
ほんと、真琴には敵わねぇな。
「2人とも、あんま張り切りすぎて怪我するなよ」
「おう!突き指注意な、奏一」
「お前もな」
初めて味わう感覚に、何処かくすぐったい気分になる。
次には外野へと山なりの打球が上がられた。
空へと溶け込む白いボールを、俺は目を細めて見上げる。
吐き出した白い息が、目の前で消えていく。
冷え込んだこの季節に、不釣り合いなほど、体は熱を帯びていた。
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