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しがらみ3
そのまま部屋までやって来ると、真琴は「おぉ…」と声を漏らしながらキョロキョロと部屋を見渡した。
「なんか、奏一っぽいな。何もない」
「何もなくはないだろ」
「もっとさぁ、ポスターとか漫画とかないのかよ。簡素過ぎだって」
「お前の部屋がゴチャゴチャし過ぎなんだろ。ガラクタばっか並べてるし」
「ガラクタじゃない!コレクションだ!」
空き缶やネジの何処がコレクションなのだろうか…。
プンスカ怒る真琴に内心思ったが、口には出さないでおいた。
「ところでさ。歌詞って、今どんな感じですかね…?」
「……あー」
おずおずと聞いてきた質問に、俺は言葉を濁す。
正直、1ミリも進んでいない。
サボっているわけではない。
自分なりに真剣に歌と向き合っているつもりだ。
だからこそ、ピタッとハマる言葉が見つからないのだ。
どれだけ文字に起こしてみても、何かが違う気がしてしまう。
今まで避けていた分、向き合おうとしたら右も左も分からない状況になってしまった。
「実は俺、全然進んでなくてさぁ」
言い淀む俺に、真琴は困ったようにへらりと力のない笑み浮かべた。
カーペットの上に胡座をかく真琴に向かい合って、俺も腰を下ろす。
真琴は「うーん…」呻きながら、ガシガシと頭をかいた。
「なんかどの言葉も違う気がするんだよなぁ。自分じゃ語彙力に限界があるから、いろんな詩とか調べてみたんだけど、いまいちピンと来なくて…」
激しく同意だった。
でも誰に相談することでもない気がして、一人でモヤモヤしている。
「でも意外だな。真琴が歌に対して全然言葉にできないなんて。歌と一心同体みたいなイメージあるのに」
「いやいやいや…、そんなこと全っっ然ないから」
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