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しがらみ4
ブンブンと手を振って否定する真琴に苦笑いする。
よく思うことだが、こいつは行動力がある割にどこまでも謙虚なやつだ。
何かそう思うようになったきっかけがあるのか分からないが、「自分なんて…」みたいな弱い部分を時々垣間見る。
少しずつ見慣れてきたものの、やはりギャップがあり過ぎてつい苦笑いが溢れてしまった。
「だから、自分の歌を見つけたい。俺の今までしてきたことは、全部真似事だから」
「真似事…?」
誰のかを問おうとした時、不意に真琴のギターケースが目に入った。
そして、無意識に理解する。
きっと真琴の辿ってきた歌は、この使い古されたギブソンにあるのだろう。
真琴はそのギターを受け継ぐとともに、持ち主の意志を探していたんだ。
ならば真琴が自分の歌を見つけるということは、その根本を覆す必要がある。
それはとても簡単なことではない。
「できるのか…?」
「…まぁ、やるしかないでしょ」
眉を下げて力のない笑みを浮かべる真琴に、無意識に手を伸ばしていた。
背中に手を回し、ぎゅっと抱きしめる。
「そ、奏一…っ?」
「何かあったら、俺に頼れよ」
「っ、あ、う、うん…」
完全に動揺している真琴にクスリと笑う。
人に甘えるとか、こいつしたことなさそう。
とことん自分に無頓着だからなぁ。
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