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しがらみ6
扉を開けると、目の前に親父が立っていた。
少し白髪の混じった髪だが、それ以外からは全く老いを感じない。
厳格で、意志の強そうな顔つきをしている。
なんだか久しぶりにその顔を見た気がした。
まぁそんなことはどうでもいいのだけれど。
その切れ長の瞳をつり上げ酷く険しい表情をしている親父は、チラリと俺の後ろを見る。
そして床に置かれたギターに一層眉間にしわを寄せた。
「何をしている」
「……別に何も」
「今ギターを弾いていただろう」
「だったらなんだよ」
「また、歌を始めたのか?」
言葉に詰まった。
碌な反抗ができない自分に腹が立つ。
黙り込んだことを肯定と捉えた親父は、どういう感情からなのか小さく息を吐いた。
「それならちゃんとレッスンを受けろ。そもそも何故すぐに報告しなかった。お前にとって歌は遊びではないんだぞ」
「…っ、俺は好きに歌いたいんだ!」
「違う。お前のそれはただの反抗期だ」
瞠目する。
今、この人は何と言った…?
俺の今していることは、ただの親への反抗だというのか…?
俺の歌の思いとは、そんなものだったのだというのか…?
幼い頃から、ずっと歌うことを強制されてきた。
だから声が出なくなった時、俺は何処かで安心していたのかもしれない。
歌と離れる理由ができたことにホッとして…、自分は歌が嫌いなのだと言い訳を作って…。
そんな俺が今自由に歌いたいと望んでいるのは、親に対する反抗なのだろうか…?
「そんな言い方、無いと思います」
「…っ!」
振り返った先。
そこには今まで見たことがないほど鋭い目付きをした真琴が立っていた。
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