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しがらみ7
「…君は?」
「奏一のこぃ……同級生です!」
俺の隣まで来た真琴が、真っ直ぐに親父を見据える。
何故だかその存在がいつもよりも逞しく感じた。
守ってもらっているとか、一瞬でも思ってしまい情けなくなる。
こんなんじゃ駄目だ。しっかりしねぇと。
無言で真琴を見つめていた親父は、再び背後のギターをチラリと見遣った。
そして何か合点があったように目を細める。
「…そうか、君が奏一を巻き込んだのか」
「親父…ッ!」
あんまりな言い方に声を上げる。
しかし親父は俺に構うことなく話を続けた。
「奏一にこれ以上関わらないでくれ。こいつの歌声を利用したいんだろうが、安売りするような真似はさせられないんだ」
「っ、利用とか、何勝手に…!」
流石に我慢できずに身を乗り出せば、真琴に腕を掴まれた。
顔を向けると首を横に振られる。
俺はなんでと問い詰めたい気持ちを抑え、唇を噛み締めた。
真琴は俺から手を離すと、次には深々と頭を下げる。
その姿にやらせない気持ちが込み上げてきて顔が歪んだ。
真琴に頭を下げるような真似をさせてしまったいる。それが何よりも腹立たしく、情けなかった。
「確かに俺は、奏一の歌声を利用しているのかもしれません。奏一となら、俺だけじゃできないことも、やり遂げられる気がした。……でもそれは、ただ純粋に奏一と歌いたいと思ったからこそです。俺は利益とか関係なしに、ただ奏一と歌いたい。それだけは分かってもらいたいんです」
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