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しがらみ9
「何してんの?ふたりとも」
「「……」」
空き教室の扉を開けた遥は、地面に倒れ伏した真琴と奏一に首を傾げた。
その背後から顔を出した陽介が「うぉっ」と声を上げる。
「な、なんで2人とも死んでんだよっ?」
「「……」」
「うーん。よく分からないけど、じゃあ俺もー」
「なっ、遥先輩!紛れて寝ようとしないでください!」
遥は真琴の隣に寝転び、背後から抱き枕よろしくギュッと抱きつく。
それを即座に起き上がった奏一が引き剥がした。
あっさり復活した奏一に、陽介は苦笑いを浮かべる。
「で、どうしたんだよ?喧嘩でもした……わけじゃないか。一緒になって死んでたし」
「……別に何もない」
「奏一ぃ、嘘ついてっとまた真琴に抱きつくよ」
「…っ」
未だ伏したまま無防備になっている真琴を一瞥し、奏一は大きなため息を漏らした。
そして渋々と言った様子で昨日あった出来事を話し出す。
事情を知った陽介は苦虫を噛み潰したような顔を浮かべた。
「うーん、奏一の親父さんかぁ…。それは随分と面倒なことになったな…」
実際に話したことはないが、どういう人間かくらいは知っている。
このまま従わずに続けていたら、無理にでもやめさせてくる可能性もあった。
「別に関係ないでしょ」
「え?」
静まりかえる教室内で、遥は相変わらずの様子であくびを漏らす。
呆気に取られたような顔をする奏一と陽介に顔を向け、遥はニヤリと悪そうな笑みを浮かべた。
「言っても聞かないなら、見せるしかねぇじゃん」
その言葉に2人は目を見張る。
すると今まで死んでいた真琴が勢いよく立ち上がった。
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