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しがらみ10
「歌はすごい歌はすごい歌はすごいー!!」
突然叫び出した真琴に、陽介は「ま、真琴が壊れた…っ」と青ざめる。
最後には両手を上へ突き上げ「ウガー!」と獣のように吠えた真琴は、一度大きく頷いた。
「うん!もう立ち直った!復活しました!」
そうして次には固まっている奏一へと顔を向ける。
鼻息を荒げる真琴に動揺していた奏一は、交わった視線に息を呑んだ。
そして呆けていた顔を引き締める。
「奏一」
「あぁ」
「歌はすごいんだ。何からも縛られない力を持ってる。だから誰に指図される必要もない」
「あぁ」
「それを、何が何でも奏一の親父さんに分からせてやろう」
その言葉に一度間を開け、はっきりと頷く。
今まで歌は、強要されてやるものでしかないかった。
しかし真琴が、その考えを覆した。
歌は何よりも自由なのだと、俺に教えてくれた。
だから証明したい。
真琴が俺に伝えてくれたことが間違っていなかったと。
俺が今していることは、親に対する反抗などではないのだと。
「やってやろうぜ」
そう言って真琴が拳を差し出してくる。
俺は「あぁ」と頷き、その拳と己の拳を合わせた。
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