119 / 142

しがらみ10

「歌はすごい歌はすごい歌はすごいー!!」 突然叫び出した真琴に、陽介は「ま、真琴が壊れた…っ」と青ざめる。 最後には両手を上へ突き上げ「ウガー!」と獣のように吠えた真琴は、一度大きく頷いた。 「うん!もう立ち直った!復活しました!」 そうして次には固まっている奏一へと顔を向ける。 鼻息を荒げる真琴に動揺していた奏一は、交わった視線に息を呑んだ。 そして呆けていた顔を引き締める。 「奏一」 「あぁ」 「歌はすごいんだ。何からも縛られない力を持ってる。だから誰に指図される必要もない」 「あぁ」 「それを、何が何でも奏一の親父さんに分からせてやろう」 その言葉に一度間を開け、はっきりと頷く。 今まで歌は、強要されてやるものでしかないかった。 しかし真琴が、その考えを覆した。 歌は何よりも自由なのだと、俺に教えてくれた。 だから証明したい。 真琴が俺に伝えてくれたことが間違っていなかったと。 俺が今していることは、親に対する反抗などではないのだと。 「やってやろうぜ」 そう言って真琴が拳を差し出してくる。 俺は「あぁ」と頷き、その拳と己の拳を合わせた。

ともだちにシェアしよう!