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しがらみ12
「寒かっただろ。すげぇ冷たい」
「大丈夫。今日はマフラーしてるから」
「手袋も耳当てもしろ。お前寒がりなんだから。ほら、中入って」
「あ、玄関でいいよ。ちょっと奏一の親父さんたちに伝えたいことがあっただけだから」
「親父たちに…?」
首を傾げた俺は次にはその意図が分かった。
でもまさか真琴がわざわざ家に出向いてくるなんてと、つい苦笑いを浮かべてしまいそうになる。
「また君か…。こんな夜に出歩くんじゃない」
その時親父と母さんがやって来た。
真琴は「すみません、いきなり」と言ってペコリと頭を下げる。
そして次には真っ直ぐに2人を見つめた。
「お二人にお願いがあって、ここまで来ました」
「お願い?」
「はい」
笑みを浮かべていたその顔が引き締まる。
そしてしっかりとした口調で、真琴は告げた。
「今度ある合唱コンクールに、是非来て欲しいんです」
その言葉に2人が僅かに目を見張る。
意図を掴めていない両親に、真琴は続けた。
「そこで俺たち、バンド演奏するんです」
「な…、何を勝手に。今すぐやめなさいッ」
「無理です。もう学校側にを申請していますし、決定事項ですから」
一歩も引かない真琴の強気な態度に、親父は言葉を詰まらせる。
構わず真琴は口を開いた。
「だからお二人に来て欲しいんです。奏一の歌を、俺たちのバンドを見て、聞いて欲しい」
「でもね…。そんな急に言われても、予定だってあるし…」
「お願いします!」
深々と真琴が頭を下げた。
隣でそれを見つめていた俺も、次には同じように頭を下げる。
頭上で2人が息を呑むのが分かった。
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