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しがらみ13
「奏一はずっと悩んで、苦しんでました。そして今、自分にとっての歌と逃げずに向き合おうとしています。軽い気持ちで歌を歌っているんじゃない。彼にはちゃんと覚悟があります」
真剣に真琴は伝えようとしてくれている。
俺という人間を受け入れ、支えようとしてくれている。
隣で語られる言葉に胸が締め付けられ、目頭が熱を帯びた。
「必死で前に進もうとしている奏一を、どうか見てあげてください!」
ありがとう、真琴。
その時、自分の中で何かが溢れてきたのが分かった。
合唱コンクール前日。
空き教室に駆け込んだ俺は、ギターを鳴らしていた真琴と目を合わせる。
「書けた?」
「…おう、書けた」
溢れ出した想いを、ありったけ詰め込んだ。
ようやく、歌と向き合うスタートラインに立てた気がする。
「真琴も書けたか?」
「…うん。書けた」
真琴も真琴で、自分にとっての歌に向き合えたのか。
笑みを溢すと、真琴も口元を緩めた。
「よし。それじゃあ最終調整だね」
立ち上がった遥先輩がそう言って腕を回す。
そうして俺たちは、それぞれの楽器を手に取った。
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