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証明2
ホール内の明かりが弱まり暗くなった。
ざわついていた周りが静かになる。
少ししてアナウンスが流れ始め、初めに歌う真琴のクラスの紹介がされ始める。
やがて下がっていた緞帳がゆっくりと上がり、4列に並んだ生徒たちと、その前に1人の指揮者、そしてピアノの椅子の隣に立った伴奏者が現れた。
すぐに真琴を見つける。
4列目の1番高い段に立った真琴は、毅然とした態度で胸を張り、真っ直ぐに前を見据えていた。
指揮者が深々と頭を下げ、続いて後ろの生徒たちも礼をする。
顔を上げ、生徒たちに向き合った指揮者が腕を上げると、生徒たちは足を開き歌う姿勢に入った。
一瞬の静寂。
そして次には、ピアノの前奏が始まる。
歌い始める生徒たち。
女性2部(ソプラノ・アルト)、男性1部(テノール)の3部合唱の歌が奏でられる。
特に難しいものではなくシンプルにまとまった曲だから、その分彼らの力量が試される歌だった。
意識してつけられる強弱。
各パートとのバランスもしっかりと取れている。
今まで俺は、聞こえてくる歌の全てが不快に感じていた。
音楽室から聞こえる合唱部の歌声。街中で流れているCDの曲。
そんなものから逃げ続けていた毎日。
でも今は、彼らの歌声が心地よく感じている。
この後2、3年生が歌い、吹奏楽部、合唱部の発表が終われば、俺たちの出番だ。
緊張してくる気持ちを抑え、小さく息を吐く。
ホールに来ているだろう両親に、全てをぶつけるのだ。
全力で思いを届けなければならない。
大丈夫…、大丈夫…。
自分に言い聞かせるように心の中で呟いてみた。
もう一度、息を吐き出す。
曲は終わりへと近づいていた。
クライマックスに入っていくにつれ、より一層盛り上がっていく。
俺は紡がれていく歌声に、そっと目蓋を閉じていた。
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