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証明4
俺たちが出て行くと、会場が揺れるほどの歓声が起きた。
どうやら文化祭の時の影響らしい。
正直こんな反応をされるなんて予想していなかったので、いきなり送られる声の数々にたじろいだ。
真琴は調子良くみんなの声に両手を張って応えている。
遥先輩はマイペースに準備をしていた。
一度大きく深呼吸してみる。
大丈夫。周りの様子はよく見えていた。
きっと歌える。
声が出なくなるのだって、克服したのだと証明する。
「どうもどうも!俺たち【Reach out!】が帰って参りましたー!」
隣では相変わらず真琴がワイワイはしゃいでいた。
更に会場が盛り上がり始める中、真琴は一度間を開け、次には引き締まった表情になる。
「……この曲は、俺たちが俺たち自身にとっての歌と向き合って作り上げた曲です。自分たちの思いは全部、この曲に込めたいと思います」
今の言葉が誰に向けられたものかを悟り息を呑む。
自分たちの思いを、この曲に…。
今までの苦しみも、苛立ちも…、そして喜びも。
俺はこの曲で、親父と母さんのもとに届けるんだ。
それが、証明することができる唯一の手段。
「んじゃ、よろしくお願いします!」
真琴が言い放つと同時、遥先輩がドラムスティックを振り下ろした。
力強く、音楽がスタートする。
会場の盛り上がりもより一層高まった。
初めのパート。
主軸は真琴、俺の本格的な出番は2番からだ。
歌詞ができたのが昨日だったから、なんとか覚えられた状態で心許ない。
それでも真琴の歌詞には、これ以上ないほどの思いが込められていることが伝わってきた。
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