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証明8
主軸の奏一が歌っていない状況で、曲が進んでいく。
奏一は項垂れたまま立ち尽くしていた。
やっぱり、自分には無理だったのだ。
所詮は両親の操り人形。
それが意志を持ち、自分の歌を歌うことなど、できやしなかった。
悪い…、真琴…遥先輩…。
このまま、歌い切ってくれ…。
「…っ!」
次には弾かれたように顔を上げる。
会場は、騒ついていた。
何が起こったのだと困惑の波が広がっていく。
「なん…で…」
呆然とする奏一に、真琴と遥は笑みを浮かべる。
2人は奏一同様、曲を中断していた。
「奏一。俺たちがいるぞ」
「…ぇ」
「俺たちが、側にいるぞ」
「っ…!」
目を見開く奏一に、真琴は無邪気な笑みを浮かべる。
そして次には、ジャァァンとアコギを鳴らした。
会場に響き渡ったその音に、騒ついていた周りが静まり返る。
すると真琴はゆっくりと人差し指を天井に向け、満面の笑みを浮かべた。
その指の示すものに、奏一は息を呑む。
「もう、一回…?」
呟いた奏一に、真琴は顔を向けた。
初めて見た時と同様、どこまでも真っ直ぐな瞳が現れる。
「さぁ、行こう。足掻いた先に、光はあるよ」
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