132 / 142
証明10
1番が終わった後の間奏からスタートする。
殆ど放心状態だった奏一も、少し遅れてベースを弾き始めた。
周りは少し騒ついたままだ。
まぁ無理もないだろう。
突然曲を中断して、突然また始めたんだから。
こんな無茶苦茶な演奏に、なんだか笑みがこぼれてきた。
ほんと、奏一といると退屈しない。
隣を見れば、奏一と目が合った。
その瞳が戸惑いに揺れる中、俺は微笑みを浮かべる。
大丈夫。
俺は知ってるから。奏一の凄さを。
俺の見込んだ男は、こんなことで挫けたりしない。
後悔なんてしていなかった。
奏一と出会って、バンドに誘って、何も悔やむことなんてない。
だって予感がしたのだ。
奏一と接していくうちに、何かが変わる予感がした。
必死で抗った先にある景色を、俺は知っている。
あの文化祭での光景は、今日まで頭の中にこびりついていた。
止まない歓声も。
歌い終わった後の高揚感も。
奏一の歌と交わった時の、全身から湧き上がってくる感情も。
忘れることなんて、絶対にできない。
だからもう一度見に行こう。
この3人で。【Reach out!】で。
だから奏一…、踏み出せ!!
ともだちにシェアしよう!