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心から2
あれから俺たちは、お疲れ会なるものをホール近くのお好み焼き屋で行った。
久遠先輩が引率のごとく仕切ってくれたので、いつも自由奔放な2人を相手にしている時よりよっぽど楽だった。
「おい遥。お前はマヨネーズをかけ過ぎだ」
「うっせーな。一々口出しすんなよ」
久遠先輩が注意をすると、遥先輩は以前のように反抗的な態度を見せる。
俺たちの時とどこか違う様子の遥先輩にはやはり慣れなかった。
ついつい眺めてしまっていると、隣の真琴が耳打ちしてくる。
「遥先輩と久遠先輩って、従兄弟らしいぞ」
「えっ」
「嘘、マジっ?」
近くで聞いていた陽介も一緒になって驚く。
まさかの事実だった。
確かに目の鋭さとか、怪しげな雰囲気とか似てなくもないけど…。
「遥先輩、久遠先輩の前だと子供っぽくなるんだよな。ま、2人は仲良しってことだっ」
「確かに、いつもの何考えてるか分からない感じはなくなるな…」
「いや…、でもあれって、仲良しっていう感じなのか…?」
「親しいことに間違いはないっしょ。あ、もう一枚食ってもいいですかっ?」
「も、もう一枚って、真琴いま何枚目だよ…」
「食い意地が張るやつだな…」
遥先輩と久遠先輩と関係に驚いたり、真琴の食いっぷりには感服しながら、お疲れ会は終わりを迎えるのだった。
その場で解散となり、俺は真琴と2人で帰路に着く。
暫くは合唱コンクールでの演奏の余韻に浸りながら、2人並んで無言のまま歩いた。
冷たい風が、火照った頬を優しく撫でる。
もう日は沈みかけ、あたりは街灯がつき始めていた。
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