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有を手に入れた最初の夜★
大貴と有は中学の時に知り合った。
当時は気が合って、欲情などせずちゃんと友達としてずっと付き合ってきた。しかし、男気強くてがさつなのに時々天然を出す可愛い有にやられ、高校に入学した辺りから恋愛対象として意識し出したのだった。
それからというもの、有を自分のものにしたい、そういう欲をずっと抱えてきた。当の有は、大貴のそんな気持ちには全くもって気が付いていないようだったが。
それに。大貴と有はもともと全く性格が違う、水と油のようなものだった。友達として付き合ってこられたのが不思議なくらいだった。たぶん中学の頃は、ぐいぐいいく性格の有に大貴がなんやかんやで合わせていたからだと思う。
本来ならば交われるわけがない2人なのだ。同じ高校に入って有への邪な感情を自覚してから。大貴はそれに鈍感な有に苛つき始めて、有に対して次第に反抗的になった。その結果、2人の距離は次第に開き始めた。
こんな状態で有を手に入れられるわけもない。高校卒業を機にすっぱりきっぱり有のことは諦めよう。そう思っていたのに。
何の因果か同じ大学に入って、不可抗力で同じ友人グループになってしまったのは予想外だった。俺の気持ちは複雑だった。また有の近くにいられる嬉しさと、有への欲望に悩まされる日々が続く憂鬱さで。
そして俺の反抗期は続いたままだったので、今も何かあればすぐに言い合いなるし(さっきみたいに)、甘いムードなんて漂うわけがなかった。大貴の言うことなんて聞いてくれるわけもないし。我が道を行く有とはますます距離が開いて、自分のものにするどころか、有に触れることすらままならなかったりするのだ。
そんな現実の有を手に入れることは至難の業だろう。
ならば。このチャンスを誰が逃そうか。この目の前の、有そっくりな、自分が創ったらしい有と好き勝手していいのなら。別に現実の有に迷惑をかけるわけでもないし。
「なあ、ちょお、聞いてもええ?」
「なん?」
「なんか欲しいと思った時って、どうしたらええの?」
「心の中で欲しいと思えば、その通りになるで」
「そうなんや……」
それならば、と大貴は試しに心の中で希望を思い浮かべてみる。すると、はあっ、と大きな溜息を吐いた後、有が渋々と大貴の方へ近付いてきた。目の前で立ち止まると大貴を見上げた。
「ほんま、お前って、そんなことしか考えてへんねんな」
そう言って、有が大貴の首に腕を回して唇を重ねてきた。
マジで?
大貴の中の小さな大貴が歓喜の舞を踊る。望んだら、本当にそうなった。ちょっと嫌々感はありましたけど。有が自ら近付いてきて、大貴にキスをしてきた。大貴は目を瞑って更に願う。
もっと激しいのして。
すると、有の舌がするっ、と大貴の口内に侵入してきて、執拗に大貴の舌を求めてきた。
「は……ん……」
絶妙なタイミングで声を上げられ、大貴の興奮は更に高まった。角度を何度も変えて求め合う。長いキスだった。
そっと有の両肩を持って、唇を離した。ウルウルと熱を持った有の瞳が大貴を見つめる。
あれ。
「有、裸になってるでっ」
「……お前もやろ」
「え??」
そう言われて自分の体を確認すると、真っ裸になっていた。これって。つまり。そういうことやんな??
顔にヤラシイ笑顔を浮かべて有を見ると、有がしょうがないとでも言うような諦め顔をして、すっと大貴の体に腕を回してきた。
「ヒロ……抱いてくれ」
「……はい」
これが、大貴の世界で有を手に入れた最初の夜だった。
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