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呼ぶ声★

「……有、どうしたん?」 「……ヒロとヤりたい」 「そうなん?」 「おん……」 「やったら、俺をやる気にさせてくれんと」 「分かっとる」  そう言って、有が大貴にキスを落としてきた。生ぬるい舌がそっと大貴の口内に入ってきて、物欲しそうに大貴の舌を捕らえて絡む。しばらく有とのキスに夢中になった。ふと、有が唇を離した。熱を持った瞳が大貴をじっと見つめる。その瞳が大貴を求める。  大貴は心の中で笑う。自分を全力で求めてくる有。そんな有を見る、この快感が堪らない。これが現実の有ではなくとも。それに近い疑似体験ができれば、こんなにも大貴は満足できるのだ。どこか物足りないと感じたのは気のせいだったに違いない。  やはり。こっちの世界に来て正解だった。  有が大貴の全身に舌を這わせ、下へと下がっていった。大貴は目を閉じて、その執拗に這う、有の舌に意識を集中する。有が、大貴の下着の上から大貴の自身を口で愛撫した。大貴の快感が次第に大きくなっていく。大貴の望むタイミングで、有の手が大貴の下着をずらして足元へと落とした。すぐに有の口での愛撫が再開する。  気持ちええわぁ。  ソファの背もたれに身を預けて有に奉仕される今の自分の状況は、最高以外何ものでもない。  ふと、有が動きを止めて上目遣いで大貴を見た。 「ヒロ……気持ちええ?」 「おん、ええよ」 「そしたら……俺のことも気持ちようしてくれる?」 「……おいで、有」  分かっているとはいえ。有が吐く言葉1つ1つが、大貴の体を熱くする。有は、ちゅうっ、と優しく大貴の自身から口を抜くと立ち上がり、再び大貴に跨がり抱き付いてきた。  その有をゆっくりとソファに押し倒す。大貴の首に腕を回して、有が真っ直ぐに大貴を見上げた。 「いっぱい、愛してな?」 「……おん」  大貴はそう短く答えて、有の唇に吸い付いた。  大貴が腰を動かす度に、有がびくりと体を震わせて大貴を見つめた。熱い吐息が有の口から漏れる。正面から有と繋がり、唇を時々重ねながら、抽送を早めていく。 「あっ、んっ、んっ……」  有が首を振って、これ以上は耐えられないとでも言うような仕草をした。 「ヒロ……も……」  その表情に、大貴の興奮が一気に高まる。何も考えずに思い切り腰を打ち付けた。  あ、イきそうや。  高まる熱が大貴を絶頂に導こうとする直前。  え?  何かが、聞こえたような気がした。大貴の意識は一瞬逸れて、耳へと集中する。  何か、懐かしい響きだった。  大貴は動きを止めて、その音がもう一度聞こえないかと耳を澄ました。繋がったままの有が瞑っていた目を開け、こちらを見た。  再び、その音が大貴の耳に届いた。それが何か分かった途端、大貴は驚きに目を見開いた。  間違いない。確かに聞こえた。あれは。 『ヒロ』  有が大貴を呼ぶ声だった。向こうの世界に生きる有が、大貴を求める声だった。聞こえるわけがないのに。有が、自分を呼ぶわけがないのに。

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