17 / 22

帰るか帰らないか

「おい、ヒロっ。お前も何か言うたらどうなん? 折角現実世界の俺が会いに来てくれてんで!! 今が一世一代の告白の時やろ?? すがってでも、連れて帰って下さい言うたらどうなん??」 「いや、だって、もう俺の気持ち言うてもうたやん、お前が。しかも言わんでもええことまで具体的に。ほんで、完全に引かれてるし。この状態で俺になんて言え言うねん」 「それでもお前はあっちの俺しかあかんのやろ?? だったら、死ぬ気でもなんでも、もっと本気出してぶつかったらどうやねんっ!!」 「お前、結局、言うとるやんかっ!! 俺が格好良く言いたいやつっ!! いくら俺から生まれたからってなぁ、何でもかんでも俺の本心、暴露しまくるなやっ!!」 「はあああ?? それくらいさせてくれやっ。今までどんだけお前の無理難題を叶えてやったと思うてんねんっ!! いつまで経っても真っ暗闇で俺1人なんて世界、ありえへんねんっ!! どんなけ俺に固執してんねんっ!! ほんま、お前、変態の極みやなっ!!」 「変態の極みで結構じゃっ!! 有以外、要らへんのやからしゃーないやろっ!!」 「ちょお、黙れやぁっ!!!」  本家有の遙か彼方まで届きそうなでかい声が暗闇の中に響いた。大貴と大貴の世界の有はぴたっと言葉を止めて、現実世界の有を見た。 「さすが本家の俺やな。凄みがちゃうわ」 「当たり前やろ。あれで、いつもキレられとんねん、俺」  現実世界の有がきっと2人を睨んだ。 「ほんま……うだうだいつまでも煩いっちゅーねん」  そう静かに呟いて、現実の有は、もう1人の有へ顔を向けた。 「ちょお、そこの俺」 「はい」 「確認したいんやけど」 「はいはい。何でも言うて」 「この世界から現実に戻るには、どうしたらええの?」 「あ、やから、ヒロが心の底から帰りたいって思うてくれんとあかんねん。それには、現実世界に戻りたいと思うだけの理由が必要やねん」 「つまり……それが、俺、ちゅーわけやんな?」 「おん。ヒロが求めてんのはあんただけやから。あんたが手に入らへんなら意味ないねん」 「……こっちにヒロがずっとおったらどうなるん?」 「……そしたら現実の世界のヒロは寝たままや。二度とあんたとは会われへん」 「今みたいにはいかへんの?」 「今回は特別サービスやねん。もう二度目はない」 「そうか……」  現実世界の有は少しの間、何か思いを巡らしているようだったが、ふと顔を上げて、今度は大貴の方を向いた。 「ヒロ」 「……はい」 「さっき、そっちの俺が言うたことは全部ほんまなん?」 「……おん」 「……俺のこと、好きやったん?」 「まあ……」 「ずっと?」 「そうですね……」 「だったら、なんであいつとヤんねん」 「……は?」 「そんなに俺のこと欲しかったんやったら、俺に直接言うたらよかったやん。なんで、こんなしょーもない世界創って、偽もんのあいつとヤんねん」 「いや、やってそれは……現実問題、有が俺のもんになるなん、思うてないし……」 「……それがアホな思い込みや言うてんねん」 「……どういう意味?」  有は拗ねたように大貴を上目遣いで睨み付けていた。事態がよく飲み込めず、その有の顔をただ見つめ返す。

ともだちにシェアしよう!