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帰るか帰らないか
「おい、ヒロっ。お前も何か言うたらどうなん? 折角現実世界の俺が会いに来てくれてんで!! 今が一世一代の告白の時やろ?? すがってでも、連れて帰って下さい言うたらどうなん??」
「いや、だって、もう俺の気持ち言うてもうたやん、お前が。しかも言わんでもええことまで具体的に。ほんで、完全に引かれてるし。この状態で俺になんて言え言うねん」
「それでもお前はあっちの俺しかあかんのやろ?? だったら、死ぬ気でもなんでも、もっと本気出してぶつかったらどうやねんっ!!」
「お前、結局、言うとるやんかっ!! 俺が格好良く言いたいやつっ!! いくら俺から生まれたからってなぁ、何でもかんでも俺の本心、暴露しまくるなやっ!!」
「はあああ?? それくらいさせてくれやっ。今までどんだけお前の無理難題を叶えてやったと思うてんねんっ!! いつまで経っても真っ暗闇で俺1人なんて世界、ありえへんねんっ!! どんなけ俺に固執してんねんっ!! ほんま、お前、変態の極みやなっ!!」
「変態の極みで結構じゃっ!! 有以外、要らへんのやからしゃーないやろっ!!」
「ちょお、黙れやぁっ!!!」
本家有の遙か彼方まで届きそうなでかい声が暗闇の中に響いた。大貴と大貴の世界の有はぴたっと言葉を止めて、現実世界の有を見た。
「さすが本家の俺やな。凄みがちゃうわ」
「当たり前やろ。あれで、いつもキレられとんねん、俺」
現実世界の有がきっと2人を睨んだ。
「ほんま……うだうだいつまでも煩いっちゅーねん」
そう静かに呟いて、現実の有は、もう1人の有へ顔を向けた。
「ちょお、そこの俺」
「はい」
「確認したいんやけど」
「はいはい。何でも言うて」
「この世界から現実に戻るには、どうしたらええの?」
「あ、やから、ヒロが心の底から帰りたいって思うてくれんとあかんねん。それには、現実世界に戻りたいと思うだけの理由が必要やねん」
「つまり……それが、俺、ちゅーわけやんな?」
「おん。ヒロが求めてんのはあんただけやから。あんたが手に入らへんなら意味ないねん」
「……こっちにヒロがずっとおったらどうなるん?」
「……そしたら現実の世界のヒロは寝たままや。二度とあんたとは会われへん」
「今みたいにはいかへんの?」
「今回は特別サービスやねん。もう二度目はない」
「そうか……」
現実世界の有は少しの間、何か思いを巡らしているようだったが、ふと顔を上げて、今度は大貴の方を向いた。
「ヒロ」
「……はい」
「さっき、そっちの俺が言うたことは全部ほんまなん?」
「……おん」
「……俺のこと、好きやったん?」
「まあ……」
「ずっと?」
「そうですね……」
「だったら、なんであいつとヤんねん」
「……は?」
「そんなに俺のこと欲しかったんやったら、俺に直接言うたらよかったやん。なんで、こんなしょーもない世界創って、偽もんのあいつとヤんねん」
「いや、やってそれは……現実問題、有が俺のもんになるなん、思うてないし……」
「……それがアホな思い込みや言うてんねん」
「……どういう意味?」
有は拗ねたように大貴を上目遣いで睨み付けていた。事態がよく飲み込めず、その有の顔をただ見つめ返す。
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