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第12話 二人の付き合い

「いや、珍しいなって思ってさ。……ね、桐生君もそう思うよね」 苦笑いをしながら、葉月は首を傾げて桐生に視線を送り同意を求めた。 桐生は終わったのか、袋を綺麗に畳んで、葉月を見つめながら優しく微笑み返した。 「……お二人とも、付き合ってるんですか?」 「付き合ってない」 「付き合ってないよ」 シンクロするように答えて、二人とも瞳を合わせて少し苦笑いをした。 二人の仲の良さを当てられたようだった。 「仲がよろしいことで何より……」 残ったぬるい水道水を飲み干して笑うと、二人は照れたように顔を赤くした。 申し訳ない気持ちはまだ残っていたが、いつの間か仲が良くなったのか、本当に仲慎ましくて羨ましくなった。 「そういえば、皐月、来週ボストンだな」 「そう、やっと行ける」 桐生は俯きながらカウンターを出ると、置いてあったPCを畳んで鞄へしまった。 締切が立て続けに続いて、気づいたら連休を挟んでしまいパスポートとエスタの申請が遅れ、桐生に初の海外旅行が中止になった経緯を先日愚痴っていた。 エスタとは観光やビジネスなど90日以内の短期滞在を目的として訪れる場合、事前に電子渡航認証システムの認証を受けることが必要になる。その認証を受けていないとアメリカに入国することができないので、それをすっかり忘れてしまい事前申請で手間取ってしまった。 申し訳ない気持ちで蒼に電話すると、蒼は喜んで電話に出たものの、とても残念そうに寂しがって、せめて早くパスポートの申請だけはして欲しかったなと拗ねて終わった。 それ以外は責めることもなく、普段通りだった。一応ボストン行の航空券は蒼と相談し、今週出発できるようになんとか手配まで出来た。 先月の黒瀬の登場を蒼は酷く怒ったように見えたが、それはその夜だけで、あとは何も言われずに今を過ごしている。 このまま何も起こらない事を願うばかりだ。 黒瀬と会ってから、もう一か月経ってるのだから、多分大丈夫だろう。 ぬるい水道水を飲みながら、葉月と桐生が仲慎ましくしている様子を羨ましく眺めた。

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