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第23話
懐かしい夢から目が醒めると、横で黒瀬が仕事をしながらPCを目の前にキーボードを叩いているのが見えた。悠はまだ可愛らしい寝顔を見せながら寝ていた。眠い目を擦りながら身体を起こした。
「………忙しそうだね。」
「まあ、こう見えても一児の親なんでね。仕事も忙しいし、充実はしているよ。」
黒瀬はそう言いながらも、真剣な顔をしながら仕事をしていた。今回は子連れで出張らしく、色々大変そうだった。
ただ向こうでは秘書がいて、ナニーも雇っているようなので不自由はしないようだった。
悠が寝ている時に赤ワインを飲みながら、黒瀬はそんな事を話していた。
「………まぁ、浮気さえなければ黒瀬は完璧だと思うよ」
溜息をついて、また背を向けて横になった。
散々浮気されて残った傷は大きく、未だにその傷だけを引き摺ってるとは言えなかった。
「もう浮気しないって言えば付き合ってくれる?」
キーボードを叩く音と、意地悪い小さな声が背中に聞こえた。相変わらずお調子物はぬけていないらしい。
「お断りです。」
「そっか……」
残念そうな声が背中に聞こえ、また微睡見ながら深い眠りについた。付き合ったとしてもまた傷つけられるのは目に見えている。いつもそんな風に冗談を言って、誤魔化していたのを思い出した。
自分には今、蒼がいる。
恰好良くて、優しくて、いつまでも愛してくれる恋人がいるのだ。黒瀬には悪いがもう少し夢を見ていたかった。静かに瞼を閉じて、揺れる機体の振動に身を任せ、付き合っていた頃を思い出した。
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