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遅咲きの繚乱(5)完

 男が妖艶に笑う。ジッパーを降ろす音が部屋に響いた。  男が自分を引き出すのを呆然と見る。男の体格に相応しいそれは、黒光りして欲望に濡れていた。  完全に勃起してる。歓喜に喉がこくりとなった。 「いい子だね」  掠れた声が囁いて、入り口に男が押し付けられる。  じっと男が喘ぐオレを見た。  何度か慣らすように腰がゆれて、一気にオレを突きあげた。 「あ……った。ったい。…………はあっ」  情け容赦ない一突きに泣き声が漏れる。 「きっつ」  そう言いながらも男は腰を止めなかった。 「啼かないとイケないんだもんね?声一杯出したいんでしょ?」  喘ぎながら頷いた。もっとめちゃくちゃにして欲しい。男の腰を握って促すと男が呻く。 「もっとしてほしい?」 「ん……っと。もっと……あ、ああ。はあ……あっ」  絶え間なく喘ぎながらぼんやりとした目で男を見る。  男が中で角度を変える。 「や。やだ」  強い刺激に体が跳ねる。 「気持ちいい?」 「そこ……あっ」  ぐいっと男が強く突き上げる。びくんと体が震えた。  はあはあと息を吐きながら逃げようとする体を男が押さえつけて感じる場所を執拗に突く。 「やだ、やだ。すご……いきそ。いきた。ああ。やだ……ああっ」 「ん。中すごい」  あられもない声が口から漏れた。  それに煽られているのか、男ががんがんと腰を振る。  中が自分でもうねるのを感じる。  ひときわ大きな声をあげると、自分が思い切り吐き出すのを感じた。 「ん……俺も出る」  身体の中にどくどくと何かが吐き出される。  ぐったり動けなくなると、ずるりと中から男が出て行った。  尻の間にくちゃりと音を立てて生温かい何かが流れ出る。  男がオレの処理をする。  血と何かでどろどろのティッシュがゴミ箱に投げ入れられた。  優しい男の手つきと終わってしまったという感覚に喉が詰まる。  布団がかけられて、男が自分のジーンズを引き上げた。  ジッパーの閉まる音に、男は服さえ全部脱がなかったんだと気づいてめまいがする。  立ち上がった男が玄関の方に行きかけて立ち止まった。  ぼんやりと背中を見送っていると天井を見上げて溜息をつく。  横顔が振り返って、皮肉な笑みが浮かぶ。 「ねえ?名前とか聞かないの?」  はっとベッドから起こした体に、男が振り向く。 「はじめて捨てたかっただけ?」  かたかたと体が震える。どう言っていいか判らずにごくりと喉を鳴らす。 「お、オレ……おっさんで。か、顔も普通で……」 「年上とか顔とか別に気になんないけどな」 「え?」  男がベッドに戻ってきて、ベッドに膝をついてオレを抱き寄せて顎をつかむ。 「俺しかいないんだよね?んで、俺が好き?好きになりそ?」  動揺して答えられずにいると、綺麗な顔が不愉快そうに歪む。 「ほんとに犯すよ?」  どういうことか、何が起きているのか判らずに呆然と男を見つめる。 「遊ばれたの?俺」  あわてて頭を振ると、男が俺を抱きしめる。 「じゃあ本気になって。俺の事好きになってよ」  そんな事を言わなくても、俺は男が好きだった。ずっとずっと、好きだったのだ。  こくっと頷くと激しく唇が重なる。角度を変えて何度もキスをされた。  されるままのオレの口に男の指が滑りこんで焦れたようにこじ開けて舌が滑りこんでくる。  長いキスが終わる頃に、これがファーストキスだと気づいた。 「オレ、これがファーストキスだ」  ぼんやりと言うと、男の綺麗な顔がほころんだ。 「俺、ラッキーだな」  もう一度唇が重なって、どうやらオレには若い恋人が出来たようだと気がついた。 <遅咲きの繚乱・おわり> 次から男目線のお話が続きます。

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