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【番外編】大人になるには 学、大人の宿へ行く(2)

 ベッドの上に降ろされて、立て膝でふるふると震えながら迅をみあげる。 「……脱いで? やらしくね」  そう言われて、スーツの襟元をぎゅっと握る。  やらしくたって、オレみたいなおっさんが脱いだって……。  あうあうと口を開けたり閉じたりして迅をみあげた。  迅の瞳がきらっと光って、黒が濃くなった。  ふっと身体が近づいて、乱暴に服の上から欲望を握りこまれる。 「いた、あ、あっ……っあ」  乱暴にこすりあげられて、腰が揺れてしまう。  硬さを増した欲望がぬちゃっと音を立てるのを感じた。 「だ……あっ、んあっ」 「かわいい声」  耳元で囁かれて膝が砕けそうになる。  本当にイってしまう。その後のことが思い浮かんだ。 「ぬぐ、ぬぐからっ」  弱々しく叫んで暴れると、迅がぱっと離れる。 「やらしく、ね」  やらしくって、どうやればいいんだ?  泣きそうになりながら、スーツのジャケットを脱いでベッドの下に落とす。 「こっち見て?」  びくんとして目をあげて、欲望に煙る瞳を見る。学の唇がゆっくりと弧を描いて微笑むのを見つめた。嘲るでも、皮肉るのでもない誘うような唇がゆっくりと言葉を紡ぐ。  お か し て あ げ る  聞こえていないはずなのに、その声がはっきりと聞こえた気がした。その言葉で脳の中がいっぱいになる。  最初の時、そうされたことを思いだして、ぶわっと毛穴が広がる。 「じん、」 「続けて……」  促されて、震える手でほどかれて垂れさがったままのネクタイを引き抜く。  もどかしい指先でボタンを外して、裾をズボンから引き出した。  はだけた下の色気の無い白のアンダーシャツ、どうしようと思って目をあげると、迅が妖艶に微笑んで言った。 「立って」  よろよろとベッドの上に立ち上がる。  ワイシャツを脱ごうとしたら、迅が近づいてきてアンダーシャツを引っ張り出して裾を差し出した。  咥えろってことだっていうのはすぐわかった。  だけど、そうするとオレの腹は迅の目の前で晒されてしまうわけで……はっきりと明るい部屋の中で身体を晒すのはすごく恥ずかしい。ごくりと喉を鳴らして、おどおどと迅を見る。 「だめ」  見透かしたように迅が言って、シャツの裾をもう一度差し出す。こういう時の迅は絶対に折れないから。そういいわけをして、身を屈めてシャツを咥える。  身を起こすと、腹が丸見えになった。  すうすうと心もとない腹を隠したくてしょうがない。  顔が平凡だから、身体には人一倍気を使ってる。腹ぽよにはなってないはずだ、適度な筋肉って思って筋トレもしてる。だけど、もう四十なんだし、肌の衰えとかやっぱりそういうのはどうしようもないし。  迅が、じっと晒された肌を見てる。  気に入らない、のか?何度も見てるはずなんだけど。  そもそも、そんな風に気にしてしまう自分がすごく情ない。だけど、だけど……やっぱりオレには迅しかいなくて、他の誰かとか絶対考えられないから、平凡な顔はともかく、身体だけでも気に入って欲しいんだ。 「トレーニング、増やした?」  その言葉にびくっとする。  あって開いた口から、アンダーシャツの裾がぽろっと落ちる。 「へえ……」  落ちたシャツの中にするっと迅の手が滑り込んだ。肌を這い上がる感触にぶるっと震える。 「やっぱ、筋肉ついてる」  あちこちを撫でられて、ベッドの上に立っているのが辛くなった。思わず身体を屈めてしまう。腹筋を確かめるように撫でていた手が胸の下で止まって、胸筋を持ち上げるようにつかんだ。 「おっぱい、ほしいの?」  足から力が抜けて、迅にもたれてしまった。ベッドの下に立つ迅の前に胸が差し出されていると気がついて息が詰まった。  迅の端正な口から赤い舌が見えて、それがみせつけるように乳首を舐める。 「ひゃ、あ、」  引けてる腰で欲望がびくんと跳ね上がった。 「あ~ごめん。いっちゃうよね」  くすくすと笑いながら、迅がアンダーシャツを口の中に突っ込んで来た。 「我慢だよ?」  オレには喘がないといけないっていう、変な癖がある。  それを利用して、時々、迅はオレをとことんまで追い詰めるんだけど、今日はそういう気分らしい。  他の男に触られちゃったし、大人のおもちゃを買いに行ったりしたから……だと思うんだけど。  ちょっと怖い。だけど、すごくどきどきしてる。  だって、そういう時の迅はオレしか見てないし、考えてない。  それで、オレが何も考えられなくしてくれる。迅のこと以外は全部飛ばしてくれるんだ。挿れられて、出される、出すこと以外全部飛んじゃうのは、すごく…………いい。 「ガチムチになるのは嫌なのに、どうしてそんなにトレーニングしちゃうのかな?」  かりっと乳首を噛まれて、声にならない悲鳴をあげた。 「最近……帰りが遅いから?」  もう片方の乳首に舌が絡む。  こっちも噛んで。  すりつけるように身体が動いてしまう。 「まなぶ?」  聞かれながられろっと舌で乳首を舐めあげられて、なんだっけと思いだそうとするんだけど、また舌が動くとなんだかわからなくなる。  片手がいじわるに乳首をひねりあげて、もう片方の手が力が入って浮きでた腹筋を撫でる。 「や、」  恥ずかしくて声が出て、ぽろっとアンダーシャツの裾が口から落ちる。迅の手が腹を伝ってまた欲望を握る。 「脱いでないのに、でちゃっていいの?」  くちゅっとぬめる音がする。 「やあっ、だめ、ぬぐ、からっ」 「ほら、やらしくなんだから……よく見えるように、これ、咥えて?」  唾液でべたべたになってるアンダーシャツを咥えて、荒い息を吐きながらベルトに手を伸ばす。もたつきながらベルトを外す。 「一枚、ずつだよ。いやらしく、ね」  涙目で迅の真っ黒な瞳を覗きこむ。薄い唇の口角が残酷に吊上がって行くのをどこかうっとりとしながら眺めた。  後からすごく後悔するのだろうとわかっていた。  誰が四十のおっさんのストリップなんか見たいもんか。  だけど、あの瞳で声で命令されたら従わずになんかいられるはずがない。  精一杯ゆっくり、腰を揺らしながらズボンを脱ぐ。  身体にフィットしたグレーのトランクスの前の色が変わっているのに気がついて顔に血があがっていくのを感じた。  縋るように迅を見ると、妖艶に微笑んだままの唇が残酷に言う。 「続けて……すごく上手だ」  上手とかそんなわけ絶対ない。  だけど、迅が見たいって言うなら、オレはそうするしかなくて。  うっくってアンダーシャツを強く噛んで、トランクスに指を掛ける。腰を振りながらゆっくりと腰からトランクスをずらすと、ちょっとひっかかってオレが飛び出す。  迅みたいに臍まで反り返った……ってなればいいんだけど、おっさんのオレはもうそんな勢いはなくて、まっすぐ突き出してるよかちょっと上、45度まではいかない、そんな角度で。  サイズだって、迅に比べたら全然小さいし。  そこをまじまじと見られて、倒れそうなほど頭に血がのぼる。  喚きながら隠したいのを、ふうふう息を吐きながら堪えた。ぎくしゃくと、それでも腰を振りながらトランクスを脱ぐ。  ズボンの輪から抜けると、所在なく迅を見る。 「ほんと、可愛い」  ひょいと迅がベッドに飛び乗って、オレをあっという間にうつぶせに押し倒した。まだ袖の通ったままのワイシャツで後ろ手に縛られてしまう。

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