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【番外編:一花】求めたっていい(3)

 学がもたもたと俺の服をひきはがす。その奉仕を黙って受けると、ぎしりと音をたててベッドに横たわる。犬のようにくんくんと鼻を鳴らさんばかりの勢いで学が俺を口に含んだ。まだ芯を持ったままの欲望は、学の遊びに簡単に勢いを取り戻す。 「またがって」  真っ赤な顔でうんうんと頷いて、学が俺にまたがる。たっぷりとローションを仕込んだ穴に指先を潜り込ませた。 「ひ、」  刺激に声をあげて、引いてしまう腰を引き寄せてぴったりと身体を合わせる。ぐちゅぐちゅと音を立てながらゆっくりと中を探ると、筋肉のしっかりついた身体がまな板の上の鯉のように跳ねる。 「あ、あ、やだ、音、」 「気持ちよさそうな音だよね。両方の指、入ってるのわかる?」  がっしりと両手で尻をつかんで、もみしだきながら交互に指を差し込む。 「……ん、んっ。わ、わかるからっ」  両方のひとさし指を穴に突っ込むと、柔らかく開く。 「ひ、ひゃ!……あ、あっ!」  くにくにと穴を開いたり閉じたりしてから、体の間に指を滑り込ませると、前から指を二本さしこんで中の感じる部分ぐりぐりとこすった。同時にぱんぱんになった玉をきつめに刺激する。 「あっ、あっ、あっ!」  動かす指の動きに合わせて学がいい声で鳴く。ぬるぬるとしている液はローションだけではない。 「うっ、うっ、でる、でるってえ」 「ダメだよ」  ぎゅっと痛みを与えるように学をつかんだ。  ぬれそぼった先に指先をつっこんで、雑にこする。 「い、いたっ。いたあっ、う、あっ」  逃げるように腰をあげた学をキスでなだめながら、それでも萎えることのない場所をいやらしくこすりあげる。 「も、したい。したい、じん」 「欲しいの?」 「うん、うん、ここ、いっぱいにして」  学が腰をふってねだる。くちゅくちゅと手の中の学が音をたてた。真っ赤な顔の中の瞳は潤んで視点が定まっていない。立ひざになった学が俺をつかむと、ゆっくりと腰を落とした。ローションで慣らされた場所はずぶずぶと俺を受けいれていく。 「うっ、ああ、ああ、はいる。いい、きもちい」  ぐちゅっと音をたててすべてを呑みこんだ学が俺の胸に手をついた。慣らすように微かに腰を振って、荒い息を吐く。 「おっきい、おっきいよお」  ひとりごとのように小声で呟き陶然とする学を、下からじっと観察する。 「イイとこに当たる?」  ん~と声を発すると学の頭がふらふらと揺れる。出来上がっている様子に笑みが零れた。  その顔をうっとりと学が見かえす。 「うごいていい?」  ぺたりと足を俺の左右について、根元までくわえこんでおねだりをする学は、女の子みたいに可愛い。  可愛いけど、足りない。 「膝、たてて?」  にっこりと微笑むとついている膝を押す。  真っ赤だった学の顔が一気に青ざめた。 「ほら、その方が奥まで届くでしょ?」 「や、やだ、」  逃げようとする学の腰をつかんで、ぐいと中えぐる。 「っっあ」 「出来るよね?」 「むり、むり、むりぃ」 「どうして?」 「は、はず、はずかし……!」  ぐいと腕をつかんで、学を引き寄せた。つながったままで、学の好きなキスをする。舐めまわしているのは口ではなく、脳の中だ。学の理性をクリームのように舐めとって、ぐずぐずに溶かしている。 「うあん。あぁ。あ、あ、ああん。きもちい、きもちいよお」  四十のおっさんとは思えない舌ったらずのただれた声。快楽を求めるようにつながったままの腰が揺れる。 「ほら、出来るでしょ?」 「むり、むりだよお、」 「うんちしてるみたいなポーズが恥ずかしいの?」 「だめぇ、だめえ」  ぐすぐすと鳴き声がもれる。ああ、こんな風に泣くのは逆効果なのに。  ぞくぞくと背筋を震わせながら、もう一度丁寧に学の口の中をさぐる。 「うごいてえ、シて……」  そう言いながら学が身を起こして腰を動かす。  すっかり女の子にしあがった学の膝をつかんで無理やり持ち上げた。  角度が変わって、ごりっと何かを突き上げた。学の身体が声にならない声をあげて硬直した。ひくひくと穴が蠢いている。 「ほら……気持ちいいでしょ?」 「あっ、ああっ。動かさないでえ」 「どうして?」  しゃがみこんだ格好の学のしたで腰を突きあげる。  きゅうきゅうと締まる穴はどうしようもなく感じていることを告げている。 「あっ、ああっ、ふあっ、だめ、だめえ」  滴るローションがねばつく卑猥な音をたてる。しゃがみこもうとする膝を許さずに腰をふった。 「学はいつも身体を鍛えているんだから、ちゃんとして」  ぱちんと尻を叩くと、びくりと身体が震える。 「だって……こ、こんなの」  ぼろぼろと涙が学の頬を伝う。 「学は俺が大好きなんだから、しょうがないでしょ? ほら、ここ、どうして欲しいの? しなくちゃならないこと、わかる?」  うっ、うっと呻きながら、されるがままに学が俺の上で踊る。  ぴたりと動きを止めると、学が物欲しげに腰を動かした。 「言って?」  ぱくぱくと学が口を開いては閉じる。焦点の怪しい瞳からまた涙が零れた。もう少し。俺はじっと学を見つめて甘い声で囁いた。 「学はおんなのこでしょ?」  びくんと学の身体が震える。 「おんなのこ、ちが、おれ、おれは……おとこ、で、おっさん、で、」  苦し気に呟くとはらはらと涙が零れた。 「男がいいの? 俺のこれ、いらない?」  腰をつきあげるとわざと抜こうと動かした。はっと目を開いた学が必死になって俺を自分の中に押しもどした。 「やあっ、やだ、やだあ」 「おんなのこじゃないなら、いらないでしょ?」 「欲しい、欲しいよお!」 「じゃあ、おんなのこだよね」 「おんなのこ……」  ぐすっ、ぐすっと学が鼻をすすっては涙をこぼす。 「でもお……でもお……は、はずかし、おれ……はずかしい」 「内緒にしてあげる」 「ないしょ?」 「うん。学がおんなのこだっていうのは、内緒」  うっく、うっくと何度も学が息を飲む。とっくに理解している。学は、女になりたい男なのだ。女になって、男に愛されたいと願う男。  けれど、自分を変える勇気はない。女の身体になるのは怖い。だから、学は学のままでいる。身の内に女を孕んで、男のままでいる。  そんな自分は奇異な存在だと醜い存在だと思う学は、それを受けいれる俺を、愛する俺を、拒めない。  俺がどんなに恐ろしい男でも、自分にとって毒であっても。  呑みこむしかないのだ。 「おんなのこでいいの?」  弱々しい声で学がつぶやく。 「いいよ」  今の俺はどんな顔をしているだろう。きっと悪魔のように微笑んでいる。  けれど、学は微笑んだ。花がほころぶように、ひどく嬉しげに。

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