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おかしな後輩2
「先輩!今日はいい天気ですね!絶好の絵描き日和ですよ!」
「先輩!一緒にお昼食べませんかっ?ついでに絵も描かせてもらえませんかっ?」
「先輩!練習頑張って下さい!絵も描かせて下さい!」
あの日から、俺の里中に付き纏われる日々は続いていた。
どこからともなく現れてきて、しつこく絵を描かせて欲しいと頼み込んでくる。
「よくやるよなぁあいつ。孤高のトキ様に猛アプローチなんて」
そう言って同じバスケ部の三浦 正樹 は揶揄うように俺を見た。
正直言い返す気力もない。
第一なんで俺なんだ。
接点なんてまるでないし、思いっきり拒絶してやってるのに。
やっぱりおかしなやつだ。
関わり合いたくない。
「先輩!おはようござ…」
「いい加減にしてくれ」
朝方、昇降口で声をかけてきた里中。
その言葉を遮って、俺は口を開いた。
目の前の後輩はぽかんとした顔でこちらを見上げる。
「散々付き纏ってきて、正直迷惑だ。俺はお前の絵のモデルをするつもりはないし、馴れ合うつもりもない。分かったらこれ以上俺に関わるな」
そうはっきり告げて下駄箱を開ける。
少し言い過ぎかもしれないが、この後輩にはちゃんと言わなきゃ分からないだろう。
これで里中が諦めてくれれば……
「かっこいい…」
「…は?」
今呟いたのは里中だ。
顔を向けると、いつもにも増してキラキラと目を輝かせている。
「辛辣な先輩、かっこいいです…!惚れ直しました…!」
「惚れっ…、馬鹿じゃないのか…」
「きゃー!ちょーイケメン!クールなところも堪らない!!」
「……」
ほんとに、なんなんだこいつは…。
勝手にテンションの上がっている里中に、俺は溜息をつき、もういいと教室へ向かうのだった。
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