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おかしな後輩3
「先輩!おれっ、お弁当を作ってきました!」
「は?」
昼休み。
いきなり3年の教室にやって来たと思えば、里中はそう言って弁当箱を差し出して来た。
里中の猛アプローチはクラスではもう恒例化しつつあるので、周りはただ面白がるようにこちらを見ている。
「先輩、是非食べて下さい!」
「断る」
「ぎゃー!冷たい目つきがかっこいい!」
そう言って騒ぎながらも、里中は引き下がろうとしない。
今から購買に行ってパンを買おうと思っていたのに、これじゃ売り切れてしまう。
「食べて下さいよ!自信作なんです!」
そう言って弁当の中身を見せられ、俺は固まった。
「このデカデカと白米の上にある顔って…」
「藤井先輩です!」
何考えてるんだこいつ…。
なんだか頭が痛くなってきた。
「いらない」と告げて教室から出る。
そんな俺の後を、里中はひょこひょことついて来た。
「これ、先輩のために作ったんです!」
「だろうな。他の相手に俺の顔の弁当やるわけないし」
「そんなの分かんないですよ!先輩かっこよくて人気だから!」
この前だって女の子に告白されてましたよねっ?その前は下駄箱にラブレター入ってたし!
と、1人で話し始めた里中。
ってかなんでそんなことをお前が知ってる。
「ねぇ先輩!藤井先輩!」
「ついてくるな。話しかけるな。関わるな」
「食べて下さいよ!おれの5時起きの苦労を石鹸の泡にしないで下さい!」
「水の泡だろ。石鹸ってただの泡だし」
「せーんーぱーいー!」
「うるせぇ」
その後も攻防戦は続き、辿り着いた購買には、もうパンは残っていなかった。
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