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おかしな後輩5
今日は体育館で他校との練習試合がある。
そのため土曜の体育館は、いつもよりも賑わっているように感じられた。
中学からバスケをやっている俺は、1年の後半からレギュラー入りをしている。
ここのバスケ部は結構レベルが高いと思う。
先輩たちもみんな技術がある人ばかりだったから、レギュラー入りできた時は正直信じられない気持ちだった。
「刻久先輩!倉庫の鍵ってまだいりますかっ?」
「あーいや。返してきて大丈夫」
「分かりました!」
テキパキと動いているのは、2年の玖保 直斗 だ。
こいつは2年の中でも、かなり才能がある。
先輩たちが抜けて新チームになってからは、晴れてレギュラー入りを果たしていた。
鍵を返しに駆けて行く玖保を見送り、もうすぐアップが始まる時間なので背を向ける。
切り替えはちゃんとしたい俺は、部活モードのスイッチを入れようとした。
その時。
「藤井せんぱーい!!」
「!?」
体育館中に響くほどの大きな声に、驚いて振り返える。
そしてこちらにブンブンと手を振るちびっ子に驚愕した。
「な、なんであいつが…」
「応援に来ました!頑張ってくださーい!」
その目立ちようといったらない。
部員には面白がられ、試合を見に来た人たちにはクスクスと笑われた。
「せんぱーい!聞いてますかーっ?」
「分かった。分かったから静かにしろ」
試合前に頭痛を感じるなんて最悪だ。
俺は大きな溜息を吐き、なんとか気持ちを切り替えようと里中に背を向けた。
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