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おかしな後輩6
練習試合の結果は、こちら側の勝利。
強豪と呼べる相手ではないものの、今学期初の試合で勝ち星を挙げられたのは良かったと思う。
部活がひと段落し解散になると、ずっと騒がしかった里中が顔を真っ赤にさせてこちらへやって来た。
「先輩!すごかったです!シュッて敵を避けてビュビュッて走って、ほんと流石です!先輩!」
「分かった。分かったから落ち着け」
興奮している里中は、キャンキャンはしゃぐ小型犬そのものだ。
なんとかテンションの高いポメラニアンを落ち着かせようとしていると、「刻久せんぱーい!」と背後から元気な声で名前を呼ばれる。
駆け寄って来たのは玖保で、満面の笑みを浮かべながら声を上げる。
「先輩!後半のシュート、流石でした!」
「あ、あぁ。ありがとう…」
「分かります!あそこ、すっごいカッコ良かったです!」
後輩2人に挟まれて、その勢いに押されそうになる。
そうして狼狽えていると、笑い声が聞こえて肩を組まれた。
横を見れば同級生で同じクラスの正樹がニヤニヤと笑みを浮かべている。
この部活のキャプテンである正樹。
爽やかイケメンともてはやされ、クラスでも部活でも男女問わず人気がある幼馴染だ。
こいつとは小学生の頃から一緒で、何かとつるむことが多い。というか正樹が一方的に絡んでくる。
こんな仏頂面した俺のどこがいいのか。
考えてることが分からないやつだ。
「さっすがトキ様。後輩たちにモテモテですなぁ〜」
「正樹。お前面白がってるだろ」
「そんなそんな。あ。そうだこれからお好み焼き食いに行かねっ?直斗と、そこのワンコちゃんも」
「えっ?おれ?おれもいいんですかっ?」
パッと目を輝かせる里中。
俺が「おい」と正樹に肘鉄するが、本人はヘラヘラ笑ったままだ。
そのまま話は決まってしまい、俺たち4人でお好み焼きを食べに行くことになる。
なにが悲しくてこんなこと…。
帰ったら即寝ようと思っていたのに。
「よーし。それじゃレッツゴー!」
「「おー!」」
元気な3人と嫌々な俺。
そのテンションの差に、今日何度目かの溜息が漏れた。
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