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気になる?後輩

来ない。 いつも事あるごとに学校で張り付いて来ていた里中が、今日は一度も顔を見ていない。 なんでだ。 もういい加減、俺が断り続けるから諦めたのだろうか。 でもこんなにパッタリと? それに土曜日には一緒にお好み焼きも食べたじゃないか。 「今日来ねーなー、陽彩ちゃん」 そう言って正樹がボールを人差し指に乗せクルクル回す。 部活が終わり、いつもなら里中がやって来る時間帯。 目に見えないしっぽをブンブン振って駆けて来る光景は、部活ではお馴染みのものになっていた。 「刻久。お前が冷たく接するから、愛想尽かされたんじゃないのか?」 「……」 「…もしかして、結構気にしてる?」 「……」 自分自身、なんでこんなにも気になるのかが分からない。 いつもただ煩いだけだと思っていたはずなのに、どうして…。 「あ。里中なら、なんか熱みたいで休んでますよ」 「え?」 声のした方を見れば、1年の後輩が舞台に座る俺たちを見上げていた。 どうやら里中と同じクラスらしく、朝から来ていないのだそうだ。 そういえば体が弱いとか言ってたな。 お好み焼き屋での里中を思い出す。 「もしかして、無理させたかな。悪いことしたかもー…」 「いや、あいつだって楽しんでただろ。これで気を遣ったら、返って傷つかれるぞ」 「……ふ〜ん」 「…なんだよ」 「随分と考えてんだな、陽彩ちゃんのこと」 「は?」 ニヤニヤと顔を覗き込まれて、一瞬固まる。 そして直ぐに我に返り、正樹に肘鉄をくらわせた。 「バカ。気持ち悪いこと言ってんな」 「グフッ…、なんか、最近さらに肘鉄の精度が上がってねぇか…?」 何か言ってる正樹は無視して舞台から飛び降りる。 季節は春。 でももうとっくに桜は散って、青々とした木々が増えてきていた。 もう少しで夏が来る。 こんなポカポカ陽気の季節に熱出すとか、ほんと不憫なやつ。 …熱は、高かったりするのだろうか。 「!」 俺はなんだか柄じゃないことを考えそうになって、それを断ち切るように部室に向かった。

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