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気になる?後輩5
「先輩の」
「え?」
何かとんでもない事に気付きそうになった気がしたが、その前に里中の声で我に返る。
里中はまだ何かを考えているようだったが、次には覚悟を決めたように顔を引き締め、こちらを見上げた。
向けられる真っ直ぐな瞳に動揺する俺に、里中は言い放つ。
「先輩の色が、すごく、綺麗なんです」
「……色?」
何のことだと首を傾げる。
そういえば土曜日にも、色がどうとか言っていたな。
確か……
“色に触れる機会が多かった” と。
「……色って、どういうことだ?」
「おれ、人の色が見えるんです」
「…ん?」
ますますわけが分からなくて困惑する。
里中は「うーん…」と唸りながら言葉を続けた。
「なんというか…。その色は、その人自体を表したもので。所謂、オーラ、みたいな…」
「オーラ…」
「上手く説明できないんですけど…。人の内側を、色として見ることができるみたいなんです…」
生まれつき、里中には色が見えているらしい。
だからその世界が里中にとっての当たり前だった。
しかしある時それが普通ではないことに気付き、困惑したようだ。
「それからは、色が見えることを誰にも言わなくなりました。内面を覗けるなんて、喜ばれることでもないですし」
そう言って笑う里中は、どこか悲しそうだった。
きっと今までに、辛い経験をして来たのだろう。
「入学式の時」
「?」
いつの間にか俯いていた顔を上げれば、里中と目が合った。
その瞳は、いつものように輝いている。
俺を見る時の、里中の瞳。
「先輩を見て、ビックリしました。上手く説明できないですけど…。先輩の色はすごく…すごく綺麗で…」
その頬を少し赤らめ、里中は俺を見上げる。
「目が離せなくなるくらい、とてもとても、綺麗なんです」
「…っ」
途端
ブワッと体が熱を帯びた。
言い表せない感情でいっぱいになって、苦しささえも覚える。
なんだ…?
なんで、こんなにも…
里中に、触れたいと思っているんだ…?
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