15 / 90
気になる?後輩6
「だからなのか?」
「え?」
「だから、絵を描きたいと思ったのか?」
俺の問いにきょとんとした里中は、次にはもじもじし始める。
こういうことを正樹あたりがしたら気持ち悪いだけだが、里中がやっても違和感がないのはどういうことなのか…。
「それもありますけど…」
「?」
小さく呟いた里中は、赤らめた顔を俯かせて言葉を続ける。
「先輩と、仲良くなりたくて…」
「…は?」
「でも先輩って孤高の存在って感じだから、どう声をかけていいのかと…その…」
言い淀み、次には照れたように「えへへ」と笑う里中。
その姿にまた感情が込み上げ、胸がいっぱいになる。
あーもう…。
こいつは、ほんと…。
「…ってやる」
「へ?」
「やってやる。お前の、絵のモデル」
「!」
途端、里中が目をまん丸にした。
信じられないものを見るように、こちらを凝視する。
あまりにも視線が痛くて顔を逸らし、俺は少しぶっきら棒に言い放った。
「描くのか、描かないのか、どっちなんだ」
「えっ。あ、か、描きます!描かせてください!」
…まったく。俺はどうかしている。
里中と接しているせいで、思考がおかしくなってしまったのだろうか。
未だ胸に広がる温かさ。
それが何なのか。
俺にはよく、分からない。
パクリと唐揚げを食べる。
やっぱりこいつ、料理上手だな…。
「…俺、流石に弁当代払った方が良くないか?」
「へ?い、いいですよ別に…!おれが好きで作ってるんだしっ」
「いや、払う。なんか罪悪感を感じてきた…」
「そんなっ、勘弁してくださいぃ…!」
ともだちにシェアしよう!